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About Bear - クマについて

クマのイラストを目にするたびに不思議に思う。わりと恐ろしい生き物だと思うけど、そののそっとした穏やかな姿を見ると妙な親しみを感じてしまうから。そう感じるのはテディベアやクマのプーさんが理由かもしれないけど、やっぱり不思議に思ってしまうのである。

まあそれはさておき、この”nice life”と書かれた活版印刷のカードに描かれた白熊にもやさしそうな気配が漂っている。ブルーのベストとオレンジ色の蝶ネクタイがなかなか様になっているし、人なんて一度も襲ったことなんかないですよという顔をしているように見える。むしろ「温かいコーヒーでも一杯いかがですか?」と言い出しそうな感じすらある。ぼくはカードを手にしてクマってなんてほっこりする生き物なんだろうと思う。子どものころ動物園で見たクマはかなりおっかない存在だったのに。

ぼくはこのカードをずいぶん気に入っていたし、カードのなかの白熊もぼくのことを気に入っていそうだったので、重い腰をあげて額装して飾ることにした。なんだか急かされているような気もしたからでもある。ぱぱっとフレームを選んで、活版印刷の風合いを壊さないようなシンプルな技法を用い、少しの遊び心を加えるみたいに下辺のビゾーに織り込んだような模様を忍ばせてみた。白熊が立っている床のイメージで。ベストのブルーと蝶ネクタイのオレンジ色を組み合わせて。

仕上がった額装はやわらかい雰囲気でわれながらいい感じになったと思う。心なしかイラストのクマも喜んでいるように見えるから不思議だ。でもその実、額装のなかにおさまった白熊はそのにこやかな笑みの裏側で鋭利な爪を研いで、いつか襲いかかるチャンスを待っているのかもしれない。そんな考えがふと頭に思い浮かんだけれど、ぼくは首をふってその危うい考えをなかった風にやりすごすことにして、クマという存在の不思議さについてもう一度考えをめぐらせることにした。


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