今日の日記。

皮膚科に行った。


一度かかった病院なのに、入り口で靴を脱ぐことを忘れて土足で数歩歩いてしまい、違和感に気付き慌ててスリッパに履き替える。


たくさんあるベンチに一人ずつ待っている人が座っていた。ソーシャルディスタンスを守る人たちばかりで少し安心する。私もしっかり距離を取らなければと入り口近くに陣取ろうとしたが、換気のためドアが開いていてエアコンが全然効いておらず、申し訳ないと思いながら人の座っているベンチの逆端に腰を下ろした。

少しして名前を呼ばれた。以前も同じ症状でかかっているのでそのとき効いた薬を出してもらい、かゆみが繰り返しているということでアレルギーのチェックを進められる。はぁ、じゃあ、と曖昧に頷くとやってみることになり、またしばらく待って採血。


担当してくれたのは若い女の子だった。「どっちの腕がいいとかありますか」と聞かれたので「どっちでも大丈夫です」と答えた。どっちの腕でも採られたことがあるしどちらがいいというこだわりもなかった。彼女はまず左腕にゴムのバンドを巻き、「右も巻いていいですか?」と聞く。頷くと両腕を締め付けられた。採血のためにあのゴムバンドをつけることは知っていたけど両腕につけられたことはなかったのでキョトンとしてしまった。台の上に腕を乗せる動作もぎこちない。どうも研修中らしい。


手首の角度を調整し、両腕の血管を指先で触って丹念に確認する彼女を心の中で応援する。がんばれ、大丈夫、私はそんなに血管がわかりにくい方ではないと思うけれど、わかりにくかったらもっと締めてもいいんだよ。私の腕が貴方の参考になるなら。と思うけれど、「もっと締めてもいいですよ」と実際に口に出すと変な人になってしまうんだろうなと思い、ただ彼女にプレッシャーをかけないよう目を逸らして待った。


横で見ていた先輩の看護師のアドバイスもあり左腕が選ばれる。「アルコール大丈夫ですか?」と聞いてくれた彼女になるべく朗らかに「大丈夫です」と頷く。私は“研修の人に注射やられたくない”とか思ってませんよ、医療を志す貴方を応援していますよ、というせめてものアピール。針を持ち血管に狙いを定めた時、先輩看護師がすかさず「拳握ってください、親指内側ね」と私に指示を出す。彼女は先輩のナイスサポートを受け無事に血管に命中させた。これで彼女はこれ以降拳を握らせることを忘れなくなるだろうな、とぼんやり思う。


針の先に繋がった採血の容器を確認すると大した量ではなさそうで安心するが、すぐに目を逸らした。彼女にプレッシャーをかけたくないし、血を見るのは苦手だ。ちらっと作業を見てすぐに目を逸らした私に彼女が「大丈夫ですか?」と声をかける。「あ、血、あんまり見れなくて」と情けない答え方をすると「もうちょっとで終わりますからね」と励ましてくれる。白衣の天使というのは本当だな、と思う。優しい。有難い。今は医療の世界は本当に大変な時期であるのにこんな若い女の子が頑張っているんだ、と思うとそれに感謝して今後も頑張ってくださいと応援したい気持ちになるが、初対面の患者としてうまく言葉にできず、「すごいですよね、仕事で人の血を見るって」とよくわからない褒め方をしてしまう。本当にすごいと思っているのは、もっと違うことなのだけれど。彼女は優しく「私もこれくらいは大丈夫なんですけど、もっと多い量の血は苦手です」と答えてくれた。怖いですよね、と謎の共感をしているうちに採血が終わり、絆創膏が貼られた。ありがとうございます、とお礼をしたときにせめて彼女への応援を込めようとする。「お大事にしてください」と去っていく笑顔はマスクをしていてもとても可愛らしかった。



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