企業は採用選考を有料にすべきか

22卒サマーインターン は例年に比べても高倍率となっている。例えば、就活生のうちOfferBox5月の新規登録学生数では、21卒学生が約24,123名、22卒学生が31,441名と、昨年に比べ3割ほど増加している。個別企業で見ても、例えばNTTデータは例年6倍のインターンが、13倍。アビームコンサルティングも締め切り前の時点で、約1万8000人がエントリーし、前年の2倍の倍率となっている。

この自体がなぜ起こっているのかを考えると、1コロナによる景気の変動により売り手市場から買い手市場になるのではないかという不安 2コロナによって学生に暇が生まれネットでの情報収集行為が加速したことが主な理由となって、例年以上に早くからサマーインターン に応募する学生、志望業界ではなくてもエントリーする学生が増えたのだろう。

しかし、エントリー数が多すぎることは企業にとって必ずしもいいことばかりではない。なぜなら、1例年以上に選考工数やコストが増えること 2学生の志望度が例年より多様なために、せっかく時間をかけて選抜した学生を失う確率は高いからである。

そこで、解決策として上げられるのが、昔、ドワンゴが行っていたエントリーを有料にする行いである。(ちなみにこれは厚生労働省の指導によって頓挫した)

私はこの施策がなかなか面白いと感じたので、企業がコロナ下で採用選考を有料化しないのか、メリットとデメリットについて考えてみた。

そもそも採用の目的は、会社の利益に貢献する社員を見定め、競合に対して獲得することである。よって、評価軸として一番優先されるべきは、採用される優秀な(会社の利益に貢献する)学生の数と質である。

まずメリットとして上げられるのが、1採用コストを金銭的・時間的・労力的に軽減できる 2エントリー数を減らし志望度が高い学生を相手にできる

デメリットとして1優秀な学生のエントリーを逃してしまう可能性がある(競合が導入しなかった場合) 2経済格差の助長を助ける可能性がある 3企業のレピュテーションリスク が考えられる。

結論、数式化できそうだが、「軽減される採用コスト」と「優秀かつエントリーが無料であった場合に採用できた学生と有料化した時に採用できる人材の差分」の二者を比較した時にどちらが大きいのか、ということを想定することで有料化すべきかの判断がくだせそうだ。(これは企業の人気度によってもどちらが大きくなるのか変わるだろう)

後者に関しては、学生視点で、受験料を科されることが、志望度、エントリーするという意思決定に対してどの程度インパクトの大きいことなのか、という検討が必要だ。(高校受験や大学受験では当たり前のように受験料かかってるけどもみなエントリーする 元々、エントリーが無料な時点で、企業にとっては歴史的に、後者の方が大きいという結論がくだされてきたのかもしれない)

結局、どのようなフィルターを用いるのが企業の採用に対して最も効果的なのか、という問いが一番大きな論点であり、その一つの方法が学歴だったり、受験料だったり、その組み合わせだったりするのだろう。

さて

ちきりん氏のブログを見ると、企業側にとっても学生側にとっても有料化の一斉の導入は倍率を下げる効果をうむことは間違いなさそうだ。また、有料化を全ての企業で一斉に導入するならば優秀な学生の動きに対して懸念する必要はないし、旧来受験料をとるかどうかを決めた時と現在が決定的に異なる、ITかによるエントリーの省力化という視点を考えるとこの判断の妥当性は上がりそうだ。

ちなみにちきりん氏によると、人気企業エントリーの有料化が進むと、就職活動の序列化がすすむという世界が想定されている。



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