会計年度任用職員制度~政府と役人による官製ワーキングプア制度~

 世間はゴールデンウィークに突入した頃ですが、筆者は3月末に自治体非正規職を退職。毎年のようにメディアが騒ぐ長期連休関連のニュースを見ても特に興味を持たずマイペースなバカンスを楽しんでおりました。

 さて、前年度11月に例の毒親発言を受けてついにキレて以降、筆者は私物整理とミニマリスト活動を続けてきました。そのためには退職が必須条件になっていましたが仮に毒親がらみの件がなかったら退職していなかったのか?

 今回のタイトルにもある令和2年度から運用開始された「会計年度任用職員制度」。筆者の知る限り大手メディアはこの制度についてほぼ報道していないと思います。それなら世間一般の人達はそもそもこの制度の存在や名前すらご存じない方が多いと思います。


 まず先に結論を言います。

 『今日の食物や住環境に四苦八苦している方を除いて国、官公庁、自治体等の会計年度任用職員募集に応募すべきではありません』

 です。

 もう少しマイルドな表現にすると「ひどい求人だからもっとまともな求人を探した方がいいよ」ですね。

 かなり否定的な結論ですが理由として簡潔に述べるなら「民間で就労経験のある大多数の方にとってメリットよりデメリットの方が大きいから」です。

 少し驚いたのですが、X(旧Twitter)で会計年度任用職員とキーワード検索すると全国自治体の募集が嫌というほど出てきます(というよりそればっかりヒットする)。

 今は全国自治体もSNSを活用(全国横並びで同じことをテンプレ的にしているだけ)の結果でしょうけど、筆者からすればこんな無意味なことに税金を投入していることに呆れます。民間人の意見としましては自業自得ですが、よほど自治体は正規職員が人材不足なのでしょうね。

 本制度は運用されてから既に4年経過しました。会計年度任用職員制度で大きく言われている問題として3年の雇い止めがあります。後でまとめますが、結局旧態依然の価値観で制度の名前をロンダリングして劣悪にしただけなんですよね。

 筆者と同じような感想を持つに至った方も多いと思いますし、ネット上でも制度に対する悪評価がそれなりに目立つようになりました。

 今回は筆者の実体験をまとめて会計年度任用職員制度が如何に悪辣なものなのかを説明したいという思いで記事を残そうと思いました。全ての内容を一つの記事にまとめると長くなりすぎてうまくまとまりそうにないので要点ごとに分けて記事をあげたいと思います。


 とりあえず退職して3週間ほど経過した時点での感想。

 離職票が届いたので職業安定所へ失業手当受給の申請に行きましたがこれがとても酷い話。

 会計年度任用職員は年度(1年間)毎の雇用(公務員の世界では『任用』であり、地方公務員法が適用され一般的な労働法から除外される)で任用通知書を出しておきながら期間満了して退職しても「自己都合退職」とかなりふざけていました。

 巷でいわれている会計年度任用職員の3年縛りは元々公務員法および地方公務員法に規則上の制限はなく、国の出した非正規雇用のガイドラインをそのまま全国自治体が準用しているだけです。会計年度任用職員制度の1年毎に更新するという無駄かつ無意味な雇用体系も旧いルールを踏襲している。

 任用通知書には「更新の可能性あり」と記載しているが、これは必ず期間終了後に再度雇用(任用)する保証にはならないとし、自分達すなわち公務員側に都合よく首を切れる雇用関係にしておきながら被雇用者側が期間満了に伴う退職を選択すると「自己都合退職」と被雇用者側に不利な条件を平気で与える。

 なお、会計年度任用職員制度の内、フルタイムで任用されている方は総務省のガイドライン通り正規職員と同等の人事規定が適用される事から雇用保険に加入せず「退職金」が支給される。一方で問題が多く叫ばれているアルバイト・パートタイムで任用されている方は雇用保険が天引きされ厚生年金も徴収されるいわば一般的な非正規職と同じ待遇であり退職金は支給されない。

 この点においても、雇用側の公務員からすれば「君らはいつ辞めても自己都合退職にしかならないから(こっちの都合に合わせて)続ければ?」という被雇用側は弱い立場である。

 あまりにも理不尽な処遇でありながら、職業安定所職員の弁では「会計年度任用職員制度は無期雇用を前提にしている。従って被雇用者が任意で退職するのは全て自己都合退職になる。3年縛りとか任用期間とかは雇用先の勝手な事情だから関係ない」と、最早非正規雇用の名を借りた合理性のない低待遇雇用=合法的なワーキングプアであると説明してきた。

 本来の非正規雇用は『必要な期間において』、『必要な能力を持った人材を』、『必要な業種へ投入する』ことで経済活動上の利便性を高めるものである。

 会計年度任用職員制度は破綻した公務員の福利厚生や給与待遇を補うために正規職員と同等あるいは正規職員以上の仕事内容を低待遇な非正規職員におしつけるために用意された「官製ワーキングプア」なのである。

 以上は雇用における顛末から見た会計年度任用職員制度のいびつさのひとつまみである。昨今指摘が多くされている会計年度任用職員制度(非正規職員)と正規職員との軋轢や溝について次の記事にまとめていきたい。

 少なくとも、こんな不合理でお粗末な求人を一体誰が勧められるのか?

 人出不足による自分達公務員の待遇改善や福利厚生維持のために官製ワーキングプアを堂々と実行する日本に嫌気がさすには十分である。


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