会社を辞めて漫画家になることを決めた理由
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会社を辞めて漫画家になることを決めた理由

以前こんな募集をして、複数の方からマシュマロをお送りいただいたテーマである。このご時世でなかなか宮崎に行く機会もできず、講座をする機会は当分先になってしまいそうなので、「会社を辞めて漫画家になることを決めた理由」を先にnoteに書いておこうと思う。

この記事がたまたま目に入って読んでいる方向けに自己紹介をすると、私は会社員として10年ほど働いてから漫画家にジョブチェンジした者である。よろしくお願いします。

結論から先に言うと、理由は以下の3点である。

①夢を思い出した
②会社がイヤになった
③オリジナルでなくても漫画を描ける市場ができていた

この3点をお伝えするために、以下つらつらと書いていく。

会社員になったワケ

そもそも会社員になった理由を書いておこう。
「生活のため」「絵で食っていく自信がなかったため」である。

私は裕福でない母子家庭育ちである。奨学金をたくさん借りて、そうとう無理して短大まで行かせてもらったが、学校を卒業したら、とにかく自分で生計を立てなければならないという強い義務感があった。

その時点でフリーの絵描きになる自信も覚悟もまったくなかったので、私はとにかくどこか会社に入ろうと思った。就活でも漫画絵でできる仕事を探して、ようやく見つけたデザイン会社を受けたが、落ちてしまった。

落ち込んで学校の就職センターに行ったら「直接的に絵やデザインの仕事ではないけど、社内報を作る要員として総務の募集があるよ」と紹介されて入ったのが元弊社(以下:A社)だった。

そこで思いのほか社内報づくりにハマり、10年近く働いたのだった。社内報づくりはおもしろかった。入社2年目は先輩が退職したり産休に入ったりしたシワ寄せがなぜか私ばかりに押し寄せてめちゃくちゃ辞めたくて毎日イライラしていたが、3年目くらいからはようやく仕事も楽しくなってきた。

毎月の収入があることで暮らしも安定して、趣味の同人活動も楽しくできていた。「絵はこのまま趣味でできればいいな〜」と本気で思っていた。

子供の頃からの夢

私は物心ついた頃から絵を描くのが好きだった。兄や姉が漫画絵をよく描いていて、描き方を教えてもらえたことが大きく影響している気がする(しかし二人とも今は描いていない)。絵を仕事にすることは私にとって自然と夢になって、小学校の卒業文集では将来なりたい職業の欄に「漫画家」と書いた。

しかし高校時代に気付いた。私は二次創作ならいくらでも描きたいものが浮かぶが、オリジナルの絵や漫画を描けない。自分で世界やキャラクターを創作するのが極端に苦手……というか、描きたいものが何もない。

雑誌投稿・デビューを経て漫画家になりたいのであれば致命的なことである。

しかしその時は深く考えず、雑誌へイラストを投稿することに熱中した。二次創作イラストが中心の投稿雑誌で、私はポケモンのファンアートばかり描いて投稿していた。だんだんイラストコンテストや表紙コーナーなどにも投稿してみたくなってきて、初めて気合を入れてオリジナルのカラーイラストを描いた。

短大に入る頃だったか、投稿していた雑誌が休刊になり、友人が投稿していたオリジナルイラストだけを扱う雑誌に投稿するようになった。友人の紹介で、イラスト審査の場にお邪魔する機会もあって、出版社の編集さんに絵を見てもらうことなどもあった。

だいたい「どこに使ったらいいかわからない」的なことを言われていた気がする。まあ当時持っていっていたイラスト、私が見ても同じことを思うけれども。BLと言うには華がないし幼いし、児童向けと言うにはオタクくさすぎるイラストばかり描いていた。そこで奇跡的に「素晴らしい! ぜひうちで描いて!」という運命の出会いがあればその場で絵を仕事にしていたかもしれないが、そんなことはなかった。

私は絵では食っていけないのだなと思い、それも会社勤めをすることの後押しになった。

さて、ここからようやく本題である。

ドリフェス!を見て夢を思い出した

会社を辞めたきっかけとしてドリフェス!を挙げると大抵笑われてしまうのだが、事実なので仕方がない。私は2016年12月、ドリフェス!のアニメ1期が完結したタイミングでアニメを視聴し、あれよあれよとドリフェス!というコンテンツにハマった。

ドリフェス!はすごいコンテンツだった。「5次元アイドル応援プロジェクト」と題し、役者として夢を追っている3次元の青年7人が、2次元キャラクターの声を担当し、ライブなどの3次元の場では歌って踊る。

私はアニメのシナリオがよく出来ていて面白くてハマり、アプリゲームにも熱中した。最初はあまり興味がなかった3次元キャストの出演番組やラジオも視聴するようになり、ライブ会場にも足を運んだ。

話数を重ねるごとに上手になるアニメの芝居、回数を重ねるごとに上手になるライブのパフォーマンス。キャストの皆さんの挑戦に次ぐ挑戦、ユニットの関係性の変化。ドリフェス!のコンテンツ展開をファンとして追いかけているだけで受け取る熱量が半端ではなかった。

で、私はなぜか「子供の頃に絵の仕事をしたかったこと」を思い出すようになった。会社の仕事も忙しく楽しくやっていたのだが、ドリフェス!コンテンツを追いかけているうちに「何かに挑戦したい気持ち」が湧いてきてしまうようになっていた。

会社でイヤなことがあってメンタル不調になった

A社を退職する前年の2017年まで、私は長期プロジェクト3つに携わっていた。その3つがほぼ同時に終わり、燃え尽きていた。そんな時、会社でめちゃくちゃイヤなことがあって、何もかもがイヤになった。これは初めてネットに書くことなのだが、メンタル不調に陥って数ヶ月休職した。

A社はホワイト企業だし、いい人もいるし、尊敬している人もいる。好きなところもけっこうあったのでそれまで我慢できていたことが、そのイヤをきっかけにイヤポイントが上回ったまま戻らなくなってしまったのだった。

数カ月の休職期間で、人生について考える時間がたくさんできた。

会社に戻ったとして、そこで給料を上げていくにはマネジメント能力とかが要るようになるだろうとか。それ絶対できる気がしないとか。役員にでもならない限りは、どんなに頑張ったって、仕事中に居眠りしたり猫のブログに日参している先輩の給料を上回ることはないのだろうとか。とはいえ他の会社で働くにしても私の貧困な能力では待遇が良くなることも難しいだろうとか。

そもそも朝に家を出て夜に家に帰ってくる生活では、ぽんちゃんさんと一緒に過ごす時間が少なすぎることなども考えた。

そこでまた夢が「絵の仕事したかったですよねえ…」と顔を出すのであった。

死ぬときの後悔を減らそうと思った

この時期に、友人の紹介で行ったバーがあった。店主の女性に人生相談をしたところ、「もしこのまま絵を仕事にしなかったら、50になっても60になってもずっと『本当は絵を描きたかった』って後悔するよ」と言われた。

老いた自分を想像して、死ぬときにも悔し泣きしてそうだな、それはイヤだなと思った。

オリジナルが描けなくても描ける漫画

「でも絵でどうやって食べていこう?」とぐるぐる考えていたある日、くろちろこさんが「えんぴつの絵は地に足ついてる感じがするから、広告漫画とかビジネス漫画とかが向いてると思うけどなあ」と言ってくれた。

そういえばこの10年で、漫画が採用されたチラシや「マンガでわかる! ○○(難しいテーマ)」という本がずいぶん増えていた。

10年近い会社勤めの中で、宇宙兄弟にハマったり服装が落ち着いたりして、私の絵は昔よりも少し大人っぽくなっていた。キラキラしたアイドルを描いたつもりでも「生活感がある」と言われて、「ほんとに地味な絵しか描けんなあ! ガハハ!」と思っていたけれども、たしかに広告漫画やビジネス漫画にはフィットしそうな気がする、と納得した。

漫画絵が使える場も増えたし、そういった場に出せる絵を描ける自分になっていたし、これならいけるのではないかと思ったのだ。

何より、広告漫画やビジネス漫画なら、描きたいことや伝えたいことは他人が持っている。自分の中に描きたいことがなくても描くことができる。A社で社内報を作る中で、「人が思っていることや頑張っていることを伝えるのって楽しいな」と思うようになっていたので、それもまた私向きだと思った。

まとめ

以上が、私が会社員を辞めて漫画家になろうと決めた理由である。
漫画家としては遅いスタートだが、会社での時間や経験も、私にとって不可欠だったと思っている。

正直、学校を卒業してすぐにでも絵を仕事にすることは、本気でやればできたのではないかとも思う。でも私は当時、私の力を信じられなかったのだ。誰かが「絶対できるよ! やろう!」と言って引っ張り上げてくれれば飛び込んだだろうが、失敗した時やつまづいた時に絶対に「あの人がああ言ったからやったのに」と恨みを爆発させていたと思う。そうならなくてよかった。

漫画や絵を描いて生活していることも嬉しいし、20歳の頃よりも自分を信じられていることも嬉しい。この先もしも生活が立ち行かなくなったとしても、「まあやってみたけどダメだったよね」とニヤニヤできるのだ。それが嬉しい。

とはいえ立ち行かなくならないように頑張る所存ではある。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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長い記事を読んでくださってありがとうございました。
引き続きテーマなど募集しております。


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えんぴつ

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サンキュな
漫画家をしている者です。文章を書くのもまあまあ好きなので、書き散らかす場として作りました。 サイト︰https://en-pit.wixsite.com/work