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自然と手に取ってしまうのは粒々したもの。
人生最後に食べたいものは、たらこスパゲッティ。
イクラの海に沈みたい。
粒々偏愛。

樹脂作家 おざきゆうさんの作品には、ビーズや鉱物などの【粒】が樹脂の中いっぱいに閉じ込められている。
彩り豊かできらきらとしているのが特徴だ。 
染料は使用せず、色合いは粒を配置して作った層を重ねることで完成される。

入れただけでしょう?と思うなかれ。
粒の材質や大きさによっては樹脂に沈む速さも異なる。
ふよふよと沈むもの、すうっと沈むもの。
見せたい面を向いてくれなかったり、あらぬ方向へ泳いでしまったり。
理想の色合いを求めて自由度を上げる度、一粒あたりの体積はより小さく、各層の密度はより増してゆく。
その中で粒をコントロールするには技術や根気、集中力を要するのだ。

 ものづくりのきっかけは、ビーズ刺繍のヘッドドレスを自身の結婚式のために自作したことだった。
その後、技術の幅を広げるためリュネビル刺繍を学び、アクセサリー制作を始めた。

大好きな刺繍制作のはず。
なのに不思議なくらいワクワクしない。

何故だろうと考えるうち、おざきさんはあることに気が付く。
それは、自分の制作が受け身状態になっているということ。
表現したいものを実現する手法として刺繍を選んでいるのではなく、学んだ技術の範囲内で作れそうなものを探している自分がいた。

加えて、ビーズはビンテージものになるほど欠けや割れができやすい。
糸を通すことを前提としたビーズ刺繍では、どんなに美しくても力を発揮することなく終わってしまう。
それが勿体なくて仕方ないという気持ちも、制作におけるワクワクをおざきさんから奪っていた。

作りたい形を実現する、そんな能動的な制作がしたい。
ビーズ一つ一つの美しい色や心踊る色合いを形として残したい。

様々な粒々を樹脂に埋め込んで魅せるスタイルはここから始まった。
彼女の作品には、彼女の「やりたい」と「好き」がいっぱいに詰まっている。
ulab.の作品を直接見る機会があるならば、是非とも手に取ってじっくり見てほしい。
表だけでなく裏からも、横からも。
見て楽しくあっと驚く粒々の世界があなたを待っている。

ブランド名である ulab. (ウラボ) は、
you & yuu laboratory .(あなたとわたしの実験室)の略。
おいしそう、食べてみたい、あたたかい、つめたい、お菓子みたい...
そんな声を聞くことがおざきさんにとって制作の糧。
見る、着ける、作る、それぞれの人から生み出される感情や感覚は、まるで実験のようで楽しい。
作品を通して心の化学反応を起こしていきたい、という願いが込められている。
昨年からは<ulab. cosmic>をテーマに、宇宙空間で生まれる一瞬のきらめきをイメージした色づくりを進めている。
制作した色合いを、別の新たな創作物として使うことも模索中だという。

これをお読みの方の中に、 沢山の色が混じった小物やアクセサリーを自身のファッションに取り込むことに難しさを感じる人はいるだろうか。
おざきさんの強みは、使用者の得手不得手に寄り添った提案ができるところにある。
対面で購入できる機会があれば、是非直接訊いてみてほしい。
手持ちのスタイルとのオススメの合わせ方や選び方のヒントは、きっと目から鱗のように感じるだろう。

ulab.
おざきゆう

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