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我が心は石にあらず

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近世~近現代を中心に部落史・被差別民衆史・部落解放運動史・部落史像について考察しています。また,部落問題を解消するための論考や実践的な提言をしていきたいと考えています。
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#差別

部落史ノート(16) 「賤民とは何か」(2)

従来の部落史像、特に「近世政治起源説」では、<きびしい差別を受け、貧しく、人のいやがる賤…

藤田孝志
1年前
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部落史ノート(15) 「賤民とは何か」(1)

菅孝行氏の著書『賤民文化と天皇制』「Ⅲ 賤民とは何か」の冒頭に、次の一文がある。 簡潔に…

藤田孝志
1年前

部落史ノート(14) 「賤民史観」とは何か(6)

数回にわたって「賤民史観」に関して、『現代の眼』に掲載された沖浦和光と網野善彦の対談「賤…

藤田孝志
1年前

部落史ノート(13) 『防長風土注進案と同和問題』(2)

「第三章 近世賤民制度の起源と機能」では、長州藩における賤民制度が領主支配との関係でどの…

藤田孝志
1年前
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部落史ノート(11) 「ケガレ」(2)

網野善彦『歴史を考えるヒント』(新潮文庫)「被差別民の呼称」に基づいて「ケガレ」について…

藤田孝志
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部落史ノート(7) 被差別民の呼称(2)

前回に見たように、網野は『天狗草紙』の「穢多」は「仏の敵である天狗」を退治する「天狗にと…

藤田孝志
1年前
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部落史ノート(5) 「賤民史観」とは何か(5)

雑誌『現代の眼』(現代評論社)11月号に掲載されている、沖浦和光と菅孝行の対談「賤民史観樹立への序章」から、彼らがどのように「賤民史」を捉えているかをまとめているが、最後に「弊牛馬処理」「農業」について彼らの考察を見ておく。 沖浦はこの当時までの被差別部落に対する認識を改めるよう、この対談でも繰り返し述べている。 沖浦は全国の部落を調査し、弊牛馬処理と関係のあった部落は意外なほどに少ないと言う。その理由を次のように述べている。 この当時から随分と研究が進み、特に地方での

部落史ノート(4) 「賤民史観」とは何か(4)

雑誌『現代の眼』(現代評論社)11月号に掲載されている、沖浦和光と菅孝行の対談「賤民史観…

藤田孝志
1年前
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部落史ノート(3) 「賤民史観」とは何か(3)

雑誌『現代の眼』(現代評論社)11月号に掲載されている、沖浦和光と菅孝行の対談「賤民史観…

藤田孝志
1年前
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部落史ノート(1) 「賤民史観」とは何か(1)

個人的なことだが、今年になって数回に分けて家の片付けと、書斎および書庫の「断捨離」をおこ…

藤田孝志
1年前
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新たな部落問題の課題(7) 「誇りの語り」の意味

黒川みどり氏の『[増補]近代部落史』に、次の記述がある。前々回にも引用したが、あらためて…

藤田孝志
1年前
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新たな部落問題の課題(6)置き去りの部落問題

黒川みどり氏の『[増補]近代部落史』に、最近の「意識調査」についての考察が述べられている…

藤田孝志
1年前
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新たな部落問題の課題(5) 「部落史の見直し」再検討

黒川みどり氏の『[増補]近代部落史』を読み終えて、あらためて部落問題の困難さを痛感してい…

藤田孝志
1年前
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新たな部落問題の課題(4) 同和教育の弊害

確かに、一時期の同和教育で実践されていた「近世政治起源説」に依拠した「江戸時代の身分制度」の授業では、貧農史観や差別の実態を誇張した教材や学習内容が無批判に語られることはあった。各地の教委が主導して作成された社会科や同和教育、道徳の「教材集」や「学習実践集」には、ピラミッド型の身分制度が表示され、「さらに低い身分」として「えた」「ひにん」が貧困・悲惨を強調されたイラストで描かれてもいた。指導する教師は、それを鵜呑みにして、これでもかと差別の厳しかった状況を説明した。それは「差