街灯・雲・鯨
夜、道を歩いていると街灯の下に雲がうずくまっていた。
「浮かび方をわすれてしまって」
気の毒なので、浮かびそうなイメージを一緒に考えてあげることにした。
「風船」「ちょっと勢いが違うかんじ」
「しゃぼん玉」「途中で消えちゃうから違うなあ」
「鳥」「あれは力入れて飛んでるから違う」
「風」「風は雲を押すものだから違うよ」
「うーん…灰汁」「灰汁って何?」「ごめん、これは違った」
雲はいう。
「もっとなんていうか、悠然と、ダイナミックで、荘厳な感じ。それでいて自由で楽しい、だった気がする」
それを聞いて浮かんだイメージを口にする。
「・・・鯨?」
「あー、いい感じ。そのイメージなら浮けそう。ありがとう」
雲は一気に膨張した。視界がもやもやと閉ざされる。
もや越しに街灯の光だけが、かすかにその居場所を示していた。
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