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わたしたちの失意

居眠りしそうな 午後の視聴覚室
窓の外をそっと眺めて 穏やかな斜陽に惹かれた

あゝ生まれ落ちた時から
ずっと喉が渇いていたんだ

あのとき もし翼が生えていたのなら
この世の外へ旅立っていたのかな

Memento mori Carpe diem!
その指先で呪文を唱えて 憧れの姿に変身しても
自堕落な心は きっと洗われないだろう

だからいっそ身を委ねて 沈んでゆく夕陽のように
それはとても心地よくて 溺れてしまいそうになった

意識を失いそうな 午後の視聴覚室
この身をいっそ委ねて 穏やかな斜陽に包まれた

あゝ生まれ落ちた時から
ずっと何か欲していたんだ

窓の外で旅客機が堕ちてゆく瞬間を
わたしは今でも覚えている

その曲線はまるで人生そのものだった
与えられた限りある燃料と寿命
機体と肢体の凡ゆる不具合
絶頂からの墜落 いずれたどるおわり

あゝ生まれ落ちた時から
ずっと肉体と精神だったんだ

あのとき もし翼が生えていたのなら
この世の中を愛おしく思えたのかな

Memento mori Carpe diem!
その指先で呪文を唱えて 憧れの姿に変身しても
自堕落な心は きっと洗われないだろう

だからいっそ身を委ねて 沈んでゆく夕陽のように
それはとても心地よくて 溺れてしまいそうになって

Memento mori Carpe diem!
その指先で呪文を唱えて 元の姿に戻ったら
せめて人間らしく 欲を満たして

art Odilon Redon, La coquille

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