見出し画像

HJKは何故1シーズンで復活できたのか

ちょっと面白い記事があったので、クラブ紹介の閑話として投稿。
今朝のHelsingin Sanomat(ヘルシンキにあるフィンランド最大の契約制新聞社)で、
以下のような記事がありました。

タイトルは、
「HJK tuplasi joukkueensa arvon – yksi avaintekijöistä on ruotsalainen pokerinero」
HJkのチーム価値は2倍に。
一つの要因としてスウェーデン人のポーカープレーヤー。
というタイトルです。

【2019の大惨敗】
当時のHJKは2009〜2014までリーグ戦6連覇。
2015は3位、2016は2位とタイトルこそ逃しましたがトップ3をキープ。
2017にはタイトルを奪還して2018も連覇。
まさに敵無しの状態でした。
しかし2019年、クラブはリーグ戦5位、カップ戦はグループステージ敗退、と過去10年で最も悪い成績を残すことになります。
これを受けてLyytikäinen会長は、
「選手の補強戦略が間違っていたな」とコメント。

【立て直し計画】
2019シーズン終了後にTakkula SDが立て直し計画を立てて、3年後の昨シーズン「計画は成功したと言える」と言っているので、会社で言うところ中計(3ヶ年中長期計画)みたいな感じでしょう。
中身の詳細は書かれていませんが、ステップとしては、
・リーグ優勝奪還(ここは年計レベル)
・ヨーロッパで競争力あるクラブにする
(ここが中計最終年2022でスタートに立てる状態)
のような感じを受けました。
会社の経営戦略を考えると分かりやすいですね。
シェア奪還は年次計画で、その後成長し続けるにはどうすれば良いか。
おそらく今までは国内での競争力に傾いていたのか、と。その慢心で5位になったので、さらに上を目指して構築することで、国内優勝は確実なもの(必達目標)にする計画を組んだものと思われます。

【計画を実行するにあたって】
記事によると、
・選手モニタリング部門
・フィジカルトレーニング部門
を設置したと書かれていますが、
おそらく、やっていなかったわけではなく、
責任者を配置して組織的にやっていこう、ということだと思います。
重要なのは、ここで得た「データ」をどうアウトプットするか。
ここで、タイトルにあるポーカープレーヤーが出てきます。Berglundさんというポーカープレーヤー。
ワールドツアーで最年少優勝をした人らしいですが、数年前に引退をし、スウェーデン国内のサッカーチームのアナリストをしていたようです。
ポーカーは、手持ちの手札の中から最大の役を作り上げるゲームです。これをサッカーに落とし込む、つまり得られたデータ・収入をどう生かして最大化するか、この考え方みたいですね。
運動能力と財務改善と書かれているので、比較的経営改善のほうがメインなのかもしれませんが、得られたキャッシュを補強にどう使うか、フィジカルデータをどうスカッドに役立たせるか、などが考えられます。

【ベンチマークをどこにするか】
BerglundはHJK及びヨーロッパのコンペティションで結果を出しているクラブの比較分析を行い、
デンマークのミッテラン
ノルウェーのグリムト
の2チームをベンチマークにして、
市場価値向上や選手育成を進めるように提案したようです。
確かに、HJK含め3チームともUCLの予選常連チームです。(国内リーグを優勝すれば権利を得られるので)
一方で、予選を勝ち抜いてグループリーグに行けるか、UELでグループリーグに行けるか、若い選手の育成や将来の市場価値はどうか、で比べると、明らか差があるので、目標とするにはちょうど良いと思います。

【スカウトプロトコール】
記事にはスカウティングプロトコールも掲載されてました。

面白いですね。
当たり前のことしか書かれていませんが、
こういった内容が記事として紹介されるのもフィンランドならではかと思います。
もちろんヨーロッパの強豪リーグだと至極当然のことですが、小国だとまだまだなのが現状です。
そんななか、イングランドやスコットランド、イタリアやドイツなど、各リーグで活躍するフィンランド人が多くいるのは非常に嬉しいです。

【選手のポートフォリオや分析】
ポジションでのポートフォリオではなく、
投資に対するリターン種ですね。
・成長力のある若いプレーヤー
・個人として価値のあるプレーヤー
・古くからいるプレーヤー
・費用対効果の低いプレーヤー
いわゆるPPM分析に近いですね。
これによって給与も変えていったようです。
企業では当たり前のことですが、なかなかクラブとなると難しいのかもしれませんね。

また、他にもスカウティング時の細かい分析の話にも触れられています。
昨シーズン、スコットランドリーグのセルティックからHazardというGKをレンタルで獲得してましたが、
統計上、
・セーブ力を落とさず
・ロングキックでチャンスメイクできる
・かつマーケットに出ている
という条件で交渉・契約したようです。
これも当たり前感はありますけどね。
本当はもっと細かい分析を、
今までやってきた量の2倍から3倍近く行って、
スカウティングをしているようです。

普段カルチョを観てる人間なので、こういったスカウティング合戦は日々情報として見ていますが、
いざ記事になると新鮮な印象を受けます。
Veikkausliigaとしては最先端なんだろうな。
他のクラブも追随して徐々にVeikkausliiga自体の市場価値が上がれば嬉しいですね。

このHazardはレンタル元に戻ってしまったので、
現時点でトップチーム登録されているGKは1人しかいませんが(先日の選手紹介参照)、今回の記事でもGKは探していると書かれているので、どのような選手を探してくるのか楽しみです。

【個人的に興味深いこと】
なんといっても田中亜土夢選手です。
亜土夢選手は2015年にHJKに移籍してきて2017年で契約満了。一旦、日本に帰国しセレッソ大阪に加入しています。
その亜土夢選手は、2019シーズンまでセレッソでプレーし、2020年は契約延長はせずに再度HJKに戻ってきています。
2020年といえば2019年の悪夢の後のシーズンです。
タイトル奪還に大きく貢献して、今もなおHJKの選手です(契約は2023年末で、1年ごとに契約延長されてます。)
興味深いのは、2019年の補強は間違っていたとして、
スカウティングを変更した上での亜土夢選手の再獲得ということです。
フィンランド好きとしては、当時「フィンランドに戻ってきた!」と、ただただ嬉しかった記憶がありますが、この記事を読んだ上で亜土夢選手の獲得及び毎年契約延長していることを考えると、クラブが亜土夢選手に対して如何に価値を見い出しているかが分かります。
もちろんアジアマーケットなども要素の1つかもしれませんが、試合にも普通に出ていますからね。
プレーヤーとして欠かせないarvopelaaja(価値あるプレーヤー)なのでしょう。
自分にとっても最推し選手です。


今回はHSの記事を紹介しながら、
HJKのここ数年の立て直しや戦略に触れました。
面白いですね。
他のクラブも似たような記事無いか探してみます
(多分無いと思いますが…)

Moi moi!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?