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紙あそび「天国のチケット」のはなし

 ずいぶん昔、アメリカの大学から帰ってきた姉に「天国のチケット」という紙遊びを教えてもらったことがあります。ある形に折った紙をちぎっていき、最後にそれを広げて並べると「HELL(地獄)」という文字と天国を現す十字架の形になる、というものです。
 姉はそれをアメリカ人から教えてもらったわけですが「いかにもキリスト教」なネタですし「こいつはアメリカで何を勉強してきたんだ!」な気持ちもあってちょっと反感をおぼえながらもよくできたあそびだなぁと思った記憶があります。しばらくしてぼくはそのやり方をすっかり忘れてしまったのですが、時々「あれはどうやるんだっけなぁ?」と思っていたので先日ネットで調べてみました。
 
 このあそびはお話をしながら用意した紙を切っていくのですが、その「お話」の内容にはいくつかバリエーションがあるようでした。代表的なものは次のようなものです。
 
 ある旅客機が飛行中に落雷に遭い、機体がまっ二つに引き裂かれてしまいました。乗客、乗務員は不幸にも全員が死んでしまいました。(ここでばらばらになった紙切れを広げていきHELLのワードを完成させます。)日頃の行いが悪かった人間はみな地獄へと落ちていきました。しかし神を信じ、人を愛する生活をした人間たちはみな天国へと導かれたのです。(ここで)残った紙片を広げるとそれが十字架になっている・・・・。というものなんですが、ぼくが姉から聞いた話はこれとはちょっと違っていました。ネットでは見当たらなかったのですが、それはこんなお話しです。
 
 ある日、ひとりのおじいさんが亡くなりました。すると神様があらわれてこう言います。
 
「おまえはとても心の優しい、だれにでも親切な人間だったからこのチケットをあげよう。天国に入る時にこれを見せれば門番がおまえを中に入れてくれるはずだ」

 そのやりとりをものかげからじっとみているもうひとりのおじいさんがいました。3日前になくなった「悪いおじいさん」です。神様が天国にもどっていくと、悪いおじいさんは良いおじいさんの前にあらわれてどなりつけます。
 
「おい!なんでおまえだけそんなチケットがもらえるんだ!神様がこんな不平等な事をしていいと思ってるのか!そのチケットをわしによこせ!」
 
「まぁ、おまえさんだって行くところがなくちゃこまるだろうからあげてもいいが、せっかく神様からいただいたものだから全部をあげるわけにはいかないよ」
 

 そういうとチケットをちぎって悪いおじいさんにあげました。
 
「ふん!なんじゃ、こりゃ!こんなちいさくちゃだめだ!もっとよこせ!」
「それじゃぁ、これでいいかい?」
「まだおまえの持ってるほうが大きいじゃないか!もっとよこせ!」
「しかたがない。それじゃ、これならいいじゃろう」
「いや!もっとよこせ!」

 そんなやりとりを何度か繰り返しているうちに良いおじいさんの持っていたチケットはとても小さくなってしまいました。
 
「これ以上は小さくできないよ」
「まぁ、これだけあれば大丈夫そうだからこの辺で許してやろう」
 

 そして悪いおじいさんはチケットを持って天国の門にやってきます。
 
「門番様、私はここに入るチケットを持っています。どうか中に入れてください」
 
門番はバラバラになったチケットを受け取り、それを1枚ずつ広げていきました。

「このチケットはここに入るためものではない。お前の行く先はここだ!」

 悪いおじいさんはびっくりして門番が広げたチケットをのぞき見ました。そこに現れていたのはHELL(地獄)の4文字でした。
 
しばらくして、良いおじいさんも天国の門にやってきます。
 
「神様からいただいたチケットをある人に分けてしまったので残ったのはこれだけなんです。こんなに小さなチケットでもここを通してもらえるのでしょうか?」
 
天国の門番はおじいさんから受け取った紙切れを広げてこう言いました。

「これは間違いなく天国のチケットだ。さぁ、お入りなさい」


 いかがでしょうか?同じギミックを使っていながら全く違う印象ではないでしょうか?こっちのほうがずっと面白いと思います。
 
ちなみに先日姉に会った時にこの紙遊びの話をしたら「何それ?ぜーんぜん覚えてなーい。」と言われてしまいました。やはり思い出に生きるのは男のほうらしいです。
 

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