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人口減少とコンパクトシティのショートストーリー


画像はイメージです。

きのうのニュースでは世界人口が100億人を超えたが日本の人口は8,000万人を割り込んだと言っていた(※1)。今日は2064年7月21日、引っ越しの日だ。ここ八木素場市に残っているのは僕らが最後の世帯。

画像はイメージです。本文とはあまり関係ありません

 おとうさん、そろそろ出るから気をつけてね。
エネルギーシステム(※2)はさっき確認したけど問題なかったよ。

画像はイメージです。本文とはそれほど関係ありません

あのエネルギーシステムももう40年、パーツを換えて修理をして、だましだまし使ってきたけどよく頑張ってるもんじゃなぁ。わしの体ももうちょ頑張ってもわんとな。
 
っても、ひとりでここに残るのはやっぱり心配だよ。それから掃除とか洗濯とかなんでもかんでも自分でやろうとしないで家事ドロイドを使いなよ。大変ならおとうさんも日屋氏中家市に来なよ。あそこなら買い物も便利だし病院も近いしさ、プロジェクションマッピングとかいろいろなイベントもやってるってさ。※3

画像はイメージです。本文との関係はよくわかりません

しょーもないプロジェクションマッピングなんて見たくねぇよ。それに東京から引っ越してからずーっとここにいたからなぁ。いまさらまた引っ越すのもおっくうだ。
 
そう言わずにさ、いつでもいいから。みんな待ってるよ。
 
オッケーオッケー。いいから早く行け。
 
うん。それじゃ、本当にみんなで待ってるから。

画像はイメージです。本文と関係があるようなないような

それから30年。
 アンチエイジングテクノロジーと体内埋め込み型のナノ医療ドロイドの劇的な低価格化で日本人の平均健康年齢は12歳を超えた。おじいちゃんはいまでもバリバリで、晴れた日は野良仕事、雨の日はテレワークに忙しく、いまだにコンパクトシティには引っ越してこない。

画像はイメージです。本文とは関係ないかも

もっともコンパクトシティ自体が今ではフレキシブルに場所を変えられるように移動型住宅のための巨大駐車場と化しているので、新調したムービングハウスに乗って時々息子の所に自宅の裏山で取れた山いもを届けにくるとのことでした。

画像はイメージです。実際の効果保障するものではありません


 
※1少子高齢化が日本の存亡にかかわる問題だ!と言われ始めたのはずいぶん昔のことらしいですが、この傾向はいっこうに改善されません。ぼくは少子高齢化が完全に地獄への道だとは思っていないのですが、それが地獄なのか天国なのかあるいは平凡な社会なのかにかかわらず、子供を持たない傾向というのはよほどのことがない限り変えられないと思っています。世界人口は100億人をちょっと超えたところで減少に転じると言われいますが、仮に一夫多妻制を含む乱婚制が採用されたり、親を特定しない試験管ベビーの量産化が可能になったりしたとしても、それすら一時的な効果しかないのではないかと考えています。それが増加に転じるためには人類の意識自体が変容を遂げる必要があり、それは、十分に人口が減るとか、人類の生存圏が宇宙空間に拡大するとかの大きな環境の変化がない限り実現しないのではいか、そんな気がしています。
 
※2 2025年から東京都の住宅には太陽光発電の設置が義務づけられます。義務化といってもいろいろな抜け道や例外もあり、実際にどうなるのかはよくわかりません。結局は補助金の支給で目くらましをして業界利権だけが残った、てなことにならないといいのですが。
この住宅用太陽光発電というのは古くなったパネルの廃棄をどうするのか、とか本当にコストが見合うのか、とかいろいろと問題点が指摘されていますが、それとは別にユーザー目線で非常に疑問なのがなぜオフグリッドの選択肢が除外されているのかということです。一般的な住宅用太陽光発電システムというのは、自分の家で電気を発電しているのにもかかわらず別途電力会社と契約をして電を購入する必要があります。これは十分な発電ができない場合は電力を購入できるようにしておかないと生活ができなくなるから、という説明は納得できるのですが、年間の日射量が十分で、かつ十分な容量の蓄電池をセットできれば夜間や雨天時にも電力会社から電力を買う必要がなくなるはずです。これは電柱や送電線が不要になるということなので、電力インフラの維持負担が過剰になる人口減少化の地方自治体においては有力な選択肢になると思います。
 
ちなみに一般的な4人世帯の電力消費量はオール電化の場合、年間7,500kWhと言われています。電気をどのくらい使うのかは、家の広さや機密断熱性能、電化製品の省エネ性能、使用頻度などの電力インフラの維持負担が生活スタイルによって全く違うのでなかなかピンとこないのですが、年間7,500kWhとすると月625kWh×従量単価31円(仮)とすると19,375円に基本料金2,000円(仮)を足して21,375円が月間光熱費ということになります。ガス併用の場合は2,000円くらいは安くなので電気代が高騰している場合はオール電化が敬遠されるのも無理はありません。しかし、10kWの太陽光システムを乗せた場合、年間17,000kWh程度の発電は見込めますので住居で使う分はまかなえる計算です。年間の使用量が7,500kWhとすると9,500kWhが余剰ですので、その分を蓄電して夜間や雨天時に使えば電力会社との契約は不要になります。ネックになるのは蓄電のコストが現状ではバカ高いということですが、量産化なり技術的なブレイクスルーなりで解決できるはずです。
ちなみに現状で太陽光発電がコストに見合うかというと、住宅メーカーは必ず「もとがとれます!」と言いますが、補助金が200万円くらい出るならペイする、とうのが実際のところのようです。
 
※3 人口減少により過疎化が進むと生活インフラが維持できなくなるので生活拠点を集約してそこに人口を集めようという考えがあります。いわゆるコンパクトシティです。ただ、人口減少がある程度まで継続的に続くとするならば、遠からずコンパクトシティの過疎化とそれに伴うコンパクトシティの統廃合という問題が発生するはずです。そのたびにインフラを作り直して引っ越しをするのも無駄ですので、この話では住居自体が移動できるようになっていて、人口動態に応じてコンパクトシティの場所を変えている社会というのを想定してみました。遊牧民的なスタイルですね。

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