見出し画像

個人的な財布の選び方 その3 三つ折り財布

 「どんな財布でも使ってるうちになじむので、どれでもい」というのがぼくなりの結論ですが、これはぼくがその結論にたどり着くまでのお話しです。
 
 三つ折り財布と呼ばれるものは、実はどんな形なのかはっきりしていません。厳密な意味でいうとお札自体を三つに折る形で収納するものを指すべきなのでしょうが、実際は二つ折りの財布にフラップがついたものも三つ折りと呼ばれています。ご存じのようにホワイトハウスコックスのそれはアパレル系で長らく定番になっていたアイテムなので「三つ折り」というとこっちのイメージのほうが強い気がします。今回はその中から選ぶことにしました。
 
  ホワイトハウスコックスのそれは、もともと女性用に考えられた形だという話もありますが、確かにちょっとそういう雰囲気があります。今では性別を問わずに使われていますがせっかくですからここはできるだけマッチョな選択を心掛けました。

  まずは素材です。革を三つに折るという時点で薄さとは決別ですからドーンと厚めのブライドルレザーでいきましょう。色はダークグリーンあたりならミリタリーウェアとも相性がよさそうです。あとはカード入れとコインケースのレイアウトですが、これも豪快に「そんなもん使ってりゃなんでもおんなじじゃ!」といきたいところです。
 
  そんなわけで、ぼくがさっさと選んだのは「ブライドル 三つ折り財布 グリーン」。


 裏地にナイロンとかを使わない総革製というのも男らしいです。内側はヌメ革ですが、「使い始める前に日に当てておくと綺麗なエイジングが楽しめる」なんて細かい事は言いませんし、「ブルームは落としてから使うか否か」なんて事も考えずにいきなりガンガン使います。この財布のメーカーは非常に丁寧な造りで定評がありますが、ブランドロゴなどはどこにも刻印されていません。これもまたマッチョです。ホワイトハウスコックスのものよりも相当分ぶ厚い印象なのも気に入っています。
 
追:この財布はある意味非常に日本的な製品です。最近だいぶかげりが見えたとはいえ、MADE IN JAPANといえば、徹底的な調査と改良を繰り返し競合他社よりも多機能で高品質な製品を低価格で提供しているのが特徴でした。それを武器に日本製品は世界中を席巻したわけです。しかし、ここで日本人は面白い動きをします。そういった改良型の製品を作り出す一方で、非常に原理主義的な製品を造ったりもし始めるのです。たとえばこの財布。これだけの厚さのブライドルレザーと総革のボディというのはあきらかなオーバースペック。こんなに頑丈な必要があるかどうかははなはだ疑問です。この財布以外でも、「本家のアメリカじゃもうこんな無骨なジーンズを造れる工場はどこにもないぞ!」というような製品を造り続ける日本のデニム屋とか、イギリスでは作られなくなった、原型に限りなく近いダッフルコートを突然発売したりするメーカーとか、いい意味で変態的にマニアックなものづくりです。ヨーロッパでキリスト教が普及するにつれて忘れ去られたギリシャ哲学がイスラムで生き続けていたような、そんな匂いがします。さらにこれが、JAPANオリジナルを生み出すことができれば、それはある種のハイブランドとして成立するような気がしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?