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コインランドリー37

夏合宿が8月1日の月曜日から8月7日の日曜日まで、河口湖の望学荘という民宿に宿泊して行われることが決まっていた。
費用は宿泊費が1日3800円×6日で22800円、コンパ代が3000円、その他に体育館使用料、交通費などを加えると4万円位は必要になるのである。

実は2年生になったら部屋を充実したいという思いで、ステレオのコンポを買う計画を立てて、貯金をしていた。
生協でカタログを入手して、色々と組み合わせを考えてきたのだ。
僕のアパートの部屋は4畳半なので、あまり大きなスピーカーは置けないので、小さなスピーカーを置くことにした。
結局、プレーヤーはデンオン、カセットデッキはナカミチ、アンプはヤマハ、スピーカーはダイヤトーンでコンポを揃えて、約21万円の出費となった。

折角ステレオをコンポで揃えたので、レコードも山下達郎のメロディーズ、メンアットワークのワークソング、ポリスのシンクロニシティを買った。

貯金が少なくなり、夏合宿の費用と帰省の費用を捻出するため、前期試験が終わった翌日から日中は日払いの引っ越しのカーゴエクスプレスでバイト、夜はニュー鳥美喜でバイトを掛け持ちした。
なんとか夏合宿の費用と帰省の費用は捻出できた。

夏合宿には坂上君の親父さんの赤いスカイラインに同期3人が同乗して参加した。

夏合宿は2年として中日に肝試しの企画を実行。
今年は2人の女子が入部していたので、みんな張り切って墓場に待機して脅かそうとしたが、藪蚊に刺されて散々な目に遭うことになる。
体力的には部で1年間を過ごして来たので、昨年程の疲労感はなかった。

夏合宿も無事に終わり、帰省した。
実は今年就職した兄が横浜営業所に配属となり、今年は兄と一緒に新幹線で帰省することになった。
兄はお盆の3日間だけ実家で過ごして横浜に戻った。
僕は9月の上旬まで実家にいて、Kさんとは日曜日毎に会った。
実家の車は和菓子の配達で親父が使うため、勝手には乗られなかった。
日曜日の親父が使わない時間をお願いして、3時間だけ借りて彼女の実家の近くの喫茶店で会った。
親父の車には和菓子屋の屋号が入っていたので、あまり喫茶店で長居すると親父がサボっているように見られるため、かなり気を使った。
交通機関が発達していない田舎での逢瀬はなかなか至難の技なのである。

夏休みの残りを実家でダラダラと過ごし、持って帰った文庫本の「龍馬がゆく」を読み終え、また、上京する日を迎えた。
例によって、日曜日の午後に新大阪駅行きのハイウェイバスの停留所で手を振ってKさんと別れた。
いつもこの時ほどやるせない気持ちになる瞬間はなかった。

手紙も以前ほど、書けなくなっていた。社会人3年目の彼女は僕よりずっと大人っぽく見えた。
僕はKさんが僕のことを信じてくれていると思うしかなく、これからのことはなるようにしかならないと思いながら、新幹線の窓の外を眺めていた。
隣に座ったビジネスマンが頻繁に吸うタバコの煙が目に染みて、涙が出そうになった。
ひかり号は東京駅を目指して、唸りを上げていた。

続く

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