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それはマンハッタンから始まった

NHKの「映像の世紀」が好きで、特に第3集「それはマンハッタンから始まった」の最後のシーンが印象に残っています。最近よくそのシーンを思い出すので、録画してあったデータを久々に見ました。

それは、リンドバーグ大西洋単独飛行をなし得た時の映像と文章です。

ジャーナリスト F・アレン
オンリー・イエスタディ より

数年に渡ってアメリカ国民は精神的飢餓状態にあった。

彼らは次から次へと以前の理想や幻想、希望が壊されていく事に気付きつつあった。宗教の土台を崩し、その感傷的な考えを嘲る科学の教義と心理学説によって。そして、猥雑と殺人とで食っている新聞の傾向によって、壊されていくのだ。

人々のリンドバーグに対する気持ちが、巨大な宗教が復活したかのような様相を呈した事に、何の不思議があろうか。

当時31歳のフィッツジェラルドは複雑な感情をこう表現しています。

S・フィッツジェラルド
ジャズ・エイジのこだま より

何か光輝く、異様な物が空をよぎった。
同世代の人々とは何も共通点を持たないかにみえた、一人のミネソタ出身の若者が英雄的行為を成し遂げた。しばらくの間人々はカントリークラブで、潜り酒場で、グラスを下に置き最良の夢に思いを馳せた。

そうか、空を飛べば抜け出せたのか…

我々の定まる事を知らない血は、果てしない大空にならフロンティアを見つけられたのかも知れなかったのだ。

しかし、我々はもう引き返せなくなっていた。
ジャズ・エイジは続いていた。我々はまたグラスを上げるのだった。


スペイン風邪以来、100年ぶりの世界的な感染症の流行。
それに伴い今後起こるであろうと予測される、世界的な不況。
インターネットが起こした変化と、以前の価値観の崩壊。
メディアやネットに渦巻く空気感。
100年前との類似性に愕然とします。

もしかしたら、明日打ち上げられるスペースXのロケットは、100年後のリンドバーグになるかも知れない。

そうか、宇宙に行けば抜け出せたのか…

先日のブルーインパルスの飛行も、上を向くための粋な演出ではありましたが、今後の世界情勢によっては戦闘機が平和的に利用される最後の映像として、後世に残るかも知れない。

これが芥川龍之介の記した「ぼんやりした不安」なのかな?
不寛容な時代が加速しない事を願うばかりです。


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