2023年の個人的邦楽ベスト50

 ちわっす師走。陛下です。お元気ですか?

 実は今年ちょっとした実験をしまして、Apple Musicに「2023年楽曲大賞(邦楽)」というプレイリストを作りました。
 ほんで、自分が「うわこの曲つっよ」って思ったやつを1アーティスト1曲縛り、50曲限定で入れていったんですよね。50曲を超えたあたりで他にやばい曲があった場合は既存の1曲と交換。結構シビアにやりました。

 さて、12月になったっつーことで、せっかくだしここら辺を整理して、特に良いなと思ったものやプッシュしたいものをnoteにてお話ししていこうかな、と思います。あんまノープランで考えてるのでバンバカ語りまくってたらスマン。ただ全部良いのでそこは安心してね。んじゃヒウィゴー。

バンド部門

TAMIW - My Innocence

 音源をリリースするたび音楽性を変えるオルタナティヴカメレオンバンド、TAMIWの3rd「Fight for Innocence」は非常にブラックミュージックからの影響の強いトリッピーな作風でした。ただ上辺を攫っただけでは当然無く、非常に90's~00'sのUKの香りを強く感じます。しっかり自分の色にして取り入れていく様はまさに「オルタナティヴ」だなと。脱帽です。
 本曲「My Innocence」はTAMIWの十八番のバラードソング。インナーセルフに語りかける歌詞やどこまでも沈んでいく音像、ミュージックビデオ含めて彼らの世界観を十二分に堪能出来ます。超オススメ。

フリージアン - サトラ

 MVの再生回数100倍足りないと思うくらいに大名曲。四季折々のしあわせを詰め込んだMVの映像が歌詞のせつなさを助長するの含めて天才だと思います。どストレートなメッセージとあり得ないくらい響く歌。フリージアン、売れなきゃ嘘だと思ってます。
 彼らの真骨頂はライヴにあると思ってて、ヴォーカルのマエダカズシ君の歌がとにかく胸に響くんですよね。関西ローカルでは名前が売れてきてるとは思うのですが、一般層にまで全国的に広く胸を打つことの出来るバンドだと思ってます。機会があったら是非ライヴ観てください、ぶっ飛びます。
 あと個人的に、ここのドラムのたなりょーさんのTwitterのファンです。

VANQULLWAR'S - 大阪砂漠

 今年ライヴを観てぶっ飛びまくったバンドの一つ、大阪のVANQULLWAR'S。
 とにかく演奏もヴォーカルもぶっとく、音楽性もとっ散らかっていながらどこか統一されているような感覚があります。改名前「穢土川番狂わす」の頃からこの音楽性はずっと地続きのようです。
 楽曲「大阪砂漠」はポエトリーラップに非常に渋いループビートで構成された楽曲。この味は彼らにしか出せないだろうなと強く感じる一曲でした。6分があっという間に過ぎます。また、ライヴではこの曲から更に四つ打ちビートのテクノミュージックに移行するアレンジを披露。良すぎてずっと酒飲んでました。

色々な十字架 - TAMAKIN

 今年ライヴ観てぶっとんだバンドの一つ。海外表記では「DIVERS CROIX」というらしい。なんかやたらカッコイイのがムカつくくらいふざけたバンドです。
 アルバム「少し大きい声」に収録されたこの楽曲「TAMAKIN」は、一部を除きほぼおふざけは封印。その一部とのギャップだけで笑わせにかかっているのですが、異端芸者時代のガゼットあたりに通じる00年代初期のヴィジュアル系の良さが死ぬほど詰まった名曲だと思います。他の楽曲も歌詞に目を瞑るだけで90年代V系の名曲ばかりが立ち並び、コンポーザー陣本当にすごいんだなと関心します。ハチャメチャな歌詞も別ベクトルで見て本当に好きです。もっと上に行ってほしいけどアングラのままでもいてほしいというワガママ。。

新亜並行空間 - 陽のあたるB棟

神戸のアートロックバンド、新亜並行空間の1stアルバム「心の理論」、今年イチと言って良いほどの名盤だと思っています。
本楽曲では疾走感溢れるギターのイントロから爽やかなサックスとビートが入ってくる彼等にとっても新機軸と言える楽曲だと思います。ただ終始爽やかで終わらず、変拍子やアカペラを取り入れる彼等のアレンジセンスの妙をわかりやすく感じられる楽曲だと思います。
「青葉の滝」「Dry」も大好物。現在活休中ですが、きっと大きくなると信じているバンドです。今のうちに要チェック、活動再開したら皆でサポートしてあげましょう。

HIP HOP部門

ralph - Get Back feat. JUMADIBA & Watson

 今年の顔が全力でキャッチーにスマブラしてるこの楽曲。無料のタイプビートの上で3人の魅力が縦横無尽に暴れ回ってます。
 結構少し前まではdrillやgrimeってアンダーグラウンドの音楽として扱われていたと思うし、ralph自身それを自覚しながら職人のように己の牙を研ぎ続けていたと思うんですが、本楽曲で遂に前に出てきた感があって凄かったです。2023年の顔、JUMADIBAもWatsonも別のベクトルでトライバルなビートにマッチしてる。今年脳死で聴ける楽曲No.1の気持ちよさでした。

KVGGLV - Chip 'n' Dale feat. NORIKIYO

 2023年のヒップホップはdrillもそうですが、house系のビートの楽曲も非常に増えた印象があります。"ラップスタア2023"で大きな爪痕を残したKVGGLV(もうサマスノの"知らない方"じゃないよね)もその1人。ラップスタアではマシーンのごとく韻を詰め込みまくるスタイルで人気を博しましたが、ソロ音源ではところどころに引き算の美学と余裕を感じます。こうしたオシャレなギャップにやられた人は多いのではないでしょうか。
 しかしなんといってもこの楽曲の白眉はfeat.のNORIKIYO。彼のアイロニーに富んだリリックがこうも軽快に飛び出しまくると笑う以外ない。アルバムも大名盤でしたし、何事もなくシーンに返り咲いてくれることを祈るばかりです。

テークエム - Bad Personality

 梅田サイファーの"最終兵器"テークエム、全曲BACHLOGICプロデュースの2ndアルバム、マジのマジで名盤です。
 現代のシーンでスキル、ポップ(キャッチー)さ、メッセージ性すべてを兼ね備えているラッパーって非常に希少だと思うのですが、彼のそういう部分でのバランスってめちゃくちゃ良いと思うんです。ルックスの独特さ、BACHLOGICプロデュースなのも含め非常にSALUに近いとっつきやすさを感じてます。
 本楽曲はそんな中でも彼のパーソナルな部分にもフォーカスしながら、リスナー自身に問いかけながらも「話さなくて良い」という言葉をhookに置く、彼の芯にある「やさしさ」「リスナーに向き合うまっすぐさ」が伝わる名曲だと思います。

OMSB - Tenchi feat. 志人

 昨年やばいアルバム「ALONE」をリリースしたばかりのOMSBのクリエイティビティが留まるところを知りません。今年もう新譜ができるんだと本当に驚きました。しかもこのアルバム「喜哀」がまた名盤。この人、完全にゾーン入ってますね。本人の持つハートウォーミングなリリックはそのままに、彼の中での新しさも見せてくれる面白いアルバムでした。
 中でも志人とのこの楽曲はタイトルを見た瞬間「交わるのか…?」と不安になってたんですが、各々が別々のストーリーテリングをする中で、違う情景から同じような色があぶり出されるような、なんとも不思議な感覚に襲われていました。情報量の多いヒップホップだからこそ感じるものなのでしょうが、こうも面白い体験は初めてのものでした。

Jinmenusagi - Sakuraba feat. bonbero, Tade Dust & Kraftykid (Remix)

 個人的国内最強ラップうまいおじさんことジメサギ。ようやく本気を出してくれました。今年の夜猫族を代表する2人(bonbero、Tade Dust)、SEEDA「Nakamura (Remix)」でのカマし方が記憶に新しいKraftykid、「高所恐怖症」で一躍時の人に躍り出たLunv Loyal、ラップスタアでの活躍が目覚ましかったSpadaと、新進気鋭のラッパー達を迎えたアルバム「東京人(Dong Jing Ren)」は、彼の新たな金字塔になると確信しました。
 Asian drillのマナーに則った全曲自作ビートに対するアプローチが完璧なのは勿論のこと、リリックのオタク臭さ(褒めてる)や内面の掘り下げなど、昔のファンが喜ぶ要素もしっかり軸として残っています。こんなジメサギが聴きたかった!
 GOLDN RUSH PODCASTでのインタビューの密度がめちゃくちゃ高いので、まだの方は是非見てみてください。彼の魅力がこの1時間半に詰まっています。


アイドル部門

代代代 - atmosphere

 今年8月13日に解散したデジタルハードコアアイドル。彼女らは確実にアイドル界の「ニュースタンダード」だったと思います。
 後述するRAY、そして解散したクロスノエシスとリリースしたスプリット盤におけるこの楽曲「atmosphere」は代代代のメロウな側面を前面に押し出しており、常にうねるシンセベースや宇宙的な音空間はどことなくL'Arc~en~Ciel「NEO UNIVERSE」を彷彿とさせます。
 解散ライヴにもお邪魔しましたが、本当に良い最後だったと思います。またどこかで観られたらいいな、本当に7年間お疲れ様でした。

RAY - 読書日記

 オルタナティヴアイドルの極北。「オルタナティヴ」に振り切って今年リリースされたアルバム「Camelia」の完成度は今年トップレベルで高く、今までの彼女たちの表現を大きく拡げるものとなったと感じます。
 「読書日記」はex. For Tracy HydeのベーシストMavさんの作曲ですが、フォトハイの空気感以上に昨年現体制を終了させたアイドル、ヤなことそっとミュートの音楽性に近しいものを覚えます。音源の時点ですばらしいものがありましたが、ライヴでのサビの叙情性は圧巻の一言でした。downy青木ロビン作曲の衝撃の楽曲「火曜日の雨」と選曲を悩みましたが今回はこちらで!

situasion - SITUASIONISTA

 以前から前衛的なダンス・ハウスチューンを連投していたsituasionですが、ここに来てそういうアヴァンギャルドさを遺憾なく発揮する楽曲を発表してきました。通なオタクも騒ぎたいパリピも唸らせる秀逸な楽曲だと思います。ライヴで何度も聴いてきたのですが、とにかく盛り上がりまくる爆裂チューンで今年ヘビロテが止まらなかった1曲でもあります。
 「Golden Time」でピークタイムテクノの一番おいしい部分をアイドル楽曲としてうまいこと昇華したり、「夢を見る島」では初の長尺プログレに挑戦したりと、今年もシチュは名曲揃いでした。マジでどの曲にするか悩んだ…

SARI - Jeopardy

 アイドル、というカテゴリで話して良いのかわかりませんが(一応元白塗りアイドルではあるらしい)…ストックホルム在住のアーティストです。
 音楽性としては和の雰囲気漂うエレクトロニカ、と言った方が近いかも。アブストラクトながらも非常にメロディはキャッチーで、DAOKOライクなウィスパーボイスがミニマルなビートにめちゃくちゃ合います。
 世代や趣味嗜好的に女性ヴォーカルのエレクトロニカというと睡蓮を彷彿とさせるのですが、この楽曲「Jeopardy」には睡蓮の持っているような静謐さ、神秘性を非常に感じます。

サクライケンタ - Solitude 4

 クマリデパート、悪魔のキッスのプロデューサーであり、2021年に突如として「削除」されたアイドルグループ、Maison book girlのプロデューサーであったサクライケンタ。彼の作曲した2枚組のインストゥルメンタル集がリリースされました。2023年に作られた楽曲はほぼ無いに等しいと思いますが、ブクガのオタクであった私には染み入る楽曲しか無いわけです。
 複雑な思いが巡るのでベストに入れようかだいぶ悩んだのですが、あの「削除」の頃の気持ちが少し浄化されたような気分になることができました。純粋に現代音楽のアルバムとして聴いても素晴らしいと思える一作です。

YouTube、Soundcloud部門


ID - Red Bull 64 Bars (prod. LEEYVNG)

 昨年発売のアルバム「B1」から約1年、Red Bullの企画で彼の持つ天才的なビートアプローチが聴けると思いませんでした。しかもビートはLEEYVNG(ジメサギ)先生。
 LEEYVNGのアルバムの流れを汲んだミニマルなAsian drillビートにメロディアスかつグルーヴィーに哲学的なリリックを乗せていく彼のスタイルは、誰にも真似できない唯一無二のものであると言えます。時々挟まれるスキャットのような節回しにはSOUL’d OUTのDiggy-MO'からの影響がうかがえたりして面白いですね。途中Jinmenusagi「Opp Otaku」のhookのフローを引用したり、彼の遊び心たっぷりの仕上がりです。

Ringwanderung - HURRICANE / 2022.09.24 LIQUIDROOM

 公演自体は昨年のものですが、これだけパフォーマンスやカメラワーク、すべてがハイクオリティなライヴ映像が無料で見られるというのはハッキリ言って異常です。CDも1000円という破格。今年のライヴ盤で圧倒的にベストでした。
 もともとパフォーマンスの強さが売りのメンバー個々のライヴクオリティも流石ながら、バンドセットメンバーのグルーヴの作り方が圧巻でした。リンワンの楽曲にソリッドさや緊張感が生まれるめちゃくちゃ良いものだったと断言します。大阪でもこのメンツでバンドセットワンマンやってお願い!!!!
 ちなみに楽曲「Adam」も最高でした。もっともっと上に行けるグループだと信じています。

水槽とクレマチス - Moon Landing!

 ex.RAYのメンバー2名に新メンバー2名を加えたSOVAの新アイドルグループの初音源。正直めちゃくちゃ期待以上でした。
 音楽性はRAYと同じくシューゲイザーがメインですが、どこかRAYと違うアイドル的かわいらしさを携えた楽曲が多い気がします。この「Moon Landing!」もそう思わせるもののひとつで、ロマンチックなストーリーテリングが素晴らしい月世界を見せてくれます。ライヴで観たときに振り付けが本当にその月世界まんまで涙してしまいました。もっと聴かれるべき。
 「旅」がコンセプトなだけに地方にもよく遠征してくれます。あなたの街に来たときには是非。素晴らしいグループです。

AOGURO - Niawanai

 関西Trap Metal & Phonkクルー、Middle Indexのメンバーであり、JinmenusagiやKamui等名だたるメンバーが参加するAUDIO RADCALのアルバムに参加するなど、要注目ラッパーであるSiX FXXT UNDXRの別名義。こちらでは彼のルーツであるヴィジュアル系ロックの耽美さを携えた音楽性をしています(名前の由来もsukekiyoの楽曲が由来)。
 他の楽曲でもそうですが、非常に内省的で心を抉るリリックとメロディアスかつメロウなフローが印象に残ります。「言葉選びが首を絞める痛みもなく唯 僕はこれ以外知らないというだけなのに」というワード、個人的にとても刺さります。

ネムレス - タペータム

 大阪が誇るセルフプロデュースのブレイクコア・アイドル、うてなゆき。
ずっとお名前を存じてはいたのですが、今年イベントで初めて観てぶっ飛びました。
 楽曲のぶっ飛び具合もとんでもないです。RAYにも楽曲提供している明日の叙景のKei Toriki作曲のクソ速BPMのブレイクコアの中を自由に浮遊する女性ヴォーカル。どう考えても好みです。
 この人、ルーツがメタルやハードコアにあるらしく、クリスマスイヴに「平沢グラインド唯」とかいう謎名義で出演するそうな。マジで意味分かんねえ(好き)。

※この楽曲のサブスク配信普通にありましたごめんなさい!!!MVは今年だしいいよね、ガハハ

特別編


LUNA SEA - AURORA

 最強ヴォーカルRYUICHIの肺腺がんとの闘いから約3年、バンドは彼らの全盛期(語弊を恐れず言います)のアルバム2枚と対峙することとなりました。
あくまで原曲をリスペクトしながら、新しい表現を加えていく形を取ったこの2枚のアルバムは、まさにLUNA SEAの「今」をしっかりパッケージできた作品になっていると強く感じます。
中でも「AURORA」では過去のRYUICHIと現在のRYUICHIのデュエットからスタートし、マイブラやRIDEを彷彿とさせるシューゲイズノイズの壁がそびえ立ちます。彼等の「今」を最もわかりやすい形で提示した最高に美しいリメイクだと思います。

BUCK-TICK - 無限LOOP

 結成からもうすぐ40年、もはや説明不要のロックバンド。
ヴォーカル櫻井敦司が57歳という若さで逝去してしまったことで、アルバム「異空」が彼の遺作となってしまったわけですが、奇しくも「死」に向き合うような楽曲が非常に多かったような気がします。名盤です。
 この「無限LOOP」は夢の無限性というか、チルなシークエンスにどこまでも落ちていくような魅力があります。還暦に近づこうという彼らの出す「円熟味」のひとつの完成形とも言えます。28年ぶりのMステ出演も納得の大名曲。櫻井敦司のいないこれからのB-Tの活動も、期待して見守り続けたいと思います。

最後に

 2023年、個人的にはとても大豊作な1年でした。とはいえ嬉しい話ばかりではなく、好きなアーティスト達の解散に加え、BUCK-TICKの櫻井敦司やX JAPANのHEATHの死など、枚挙にいとまのない悲しいニュースが散見されたのも事実です。でも、こうやって喜んだり悲しんだりを繰り返すのが人生なんだよな、と少し悟ったような気持ちを覚え始めたのも事実です。
 今回「アレが紹介されてない」とか「アレをプレイリストに入れろ」とか、色々ご意見があるだろうことも承知しております。というか、そういう会話をしましょう。そういう会話から新しい発見とか、新しい関係が生まれると信じています。僕はその「新しい刺激」をずっと求めています。2024年もきっと素晴らしい年になります。僕にとっても、あなたにとっても。


P.S. 
 12/6(水)発売のTHE NOVEMBERSのセルフタイトルアルバム、ライヴのお渡し会に行ったことで先に聴いてるんですが…どヤバいので絶対に聴いてください。僕は「誰も知らない」推しです!!!!!!

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