見出し画像

Self liner notes #03 kioku

アルバム『Amorphous 404』の各曲を勝手に解説、セルフライナーノーツの3曲目。6/10のレコ発ライヴの予習になるかもよ?

---------
約11年間、京王線という新宿から西方に伸びる私鉄沿線に住んでいた。そこから離れて3年くらい経て過去の最寄駅よりもっと手前で降り立つ用事があり、ビジターとして久しぶりに京王線に乗った。
これはライナーノーツ。忘れないでね。
京王線というのは、新宿駅から次の笹塚駅になるまで地下を進む。発車直後の加速の揺れに抗えず吊り革に手をかけた腕から、吊り革に頼らず直立している女子学生の姿が飛び込む。色々可愛らしかったはずだが記憶の中に顔がない。第1ボタンを外した白いブラウスの襟の狭間の煌めきだけに吸い込まれた。

蠍座のマーク(emma製)


イニシャル「m」だったのかもしれない。チラチラした小ぶりのペンダントトップが星占いの蠍座のマークに見えた。「m」の右下が槍のようになっていて、その槍がいきなり私を突いてきた。笹塚までの約5分間、線路の継ぎ目の規則的な揺れと共にかつての11年間が弾き出された。楽しかった悲しかった、ではなく、11年の塊を京王線が認めてくれたみたいな、ごつごつした手触り。
急にグググと昇り、晴れた日はプファーっと光を纏って笹塚駅に入線する。その日も眩しかった。そして夜に、このゴツゴツやリズムをなんとか表さなくてはと音にしてみた。
笹塚までの5分で必要な言葉も揃えられたのに、それらの歌の中での配置に難儀して、録音を始める直前まで迷っていた。
kiokuも樋口くんがドラムを叩いてくれる曲にノミネートされたから、ドラム樋口拓美氏、ベース鈴木博文氏、とギター猪爪東風くんが参加。実は、私が京王線で刻んだリズムと、彼らの刻みは違う。でもそのままにした。仕上がってみるといい感じだし。でもどっちも正解。ライヴではどうしようかな。
楽器をそれぞれに録音したアルバム中の3曲は、森達彦さんにミックスをお願いした。先のnaraもそうである。森さんは「一見薄づきに見えて実は手の込んでいるプロのナチュラルメイク」を音で作ってくれる人。歌詞を大切にしたアレンジに優しさが滲んでいて、これからもお願いしたいのです。
このミックスのやり取りをしている途中で思いついてしまい、私の息子、うてなちゃん(犬)ヴォーカルを加えてもらう。映画『アウトレイジ』で啖呵ふっかけて真っ先にヤられてしまうチンピラみたいな小粒な鳴き声が、この歌のメッセージをまさに全身で体現していると思うのは親バカでしょうか。

ライヴは
2023/06/10(土)
open 18:30 / start 19:00
コチラ→ emma mizuno LIVE「Amorphous 404」
配信アリます。

CDはここでも買えます←クリック

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?