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いいねの数だけ

毎日大してやることがないのに、段々と生活スタイルがハムスターに寄ってきている。これはアカン、とは思っているものの、やはり1人静かな環境に置かれると俄然やる気が出てきてしまう。

私は勢いよく席を立ち、最後に使ったのがいつ頃なのかも分からないフェルトや裁縫道具を引っ張り出してきた。好きなアーティストの公式キャラクターのマスコットを作ろう!私の始まりはいつだって午前2時なのである。

しかし、ただ作るわけにはいかない。作るからにはディテールまでも拘りたいものだ。誰よりも上手く作りたいという気持ちが燃えたぎってくる。私は手始めに、公式で販売されていたぬいぐるみの写真をたくさん見比べて、特徴を抜き取っていった。

さてと、さっそく形に起こしていこう。私はそこら辺に放ったままだったシーチングを手に取った。さっき抜き取ったばかりの特徴を、手先を通してその布に移していく。順調に形が出来てきている、いいぞいいぞ。「現物ないしラブオフとは言えないな、ドレーピングに近いのかな?」なんて考えながらわずかな特徴をも再現していく。やっぱり楽しい。

ドレーピング、製図、もう一度形を見るためにトワル(と言っていいのかは分からない)を組み、型紙に起こした。やっとこさ本番のフェルトへ。こうやって何段階も過程を踏むからこそ、より綺麗な仕上がりになるのだと学校で学んだ。

ちまちまと手の中で縫い進めたそれは、昼夜逆転が1回転してしまった2日目の夜、ではなく朝に完成した。マスコットなだけあり小さいので、さほど時間はかからなかった。出来栄えもすごく良いー!自画自賛タイム(おい)

さあ出来たぞ。早速SNSに載せよう。と思ったが、当のアーティストはメディア露出が激しいし、ハッシュタグをつけようも投稿が流れそう、なんて勘繰った。でも「やっぱ出来たてホヤホヤ載せたい!」の気持ちが勝ってしまった。一応時間は見計らい、満を持してマスコットの写真をあげた。

フォロワーは両手に収まるか収まらないか、そのくらいの弱々のアカウントだったが、私の予想に反して何倍ものいいねがついた。

音垢の人たちが顔面を晒して承認欲求を満たすところを、私は手先の器用さで満たしているかと思ったら、それはそれで少し悲しくなった。けれどそれと同時に、目に見えるいいねというものの多さで自分の技量を再確認できた気はした。やっぱり、いつかはものづくりを仕事にしたいな、と思えた。

鈍らないようにもコツコツとものづくりを続けて、いつかは衣装提供なんかもできたらいいな、なんて妄想をしながら、何度も通知欄をスワイプするのであった。

2024-3-12

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