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あなたが読んでくれるなら

その人の書く文章が好き。

たぶん、初めて読んだ時から好きだった。私も文章を書くから嫉妬しそうなものだけど、そんな気持ちは生まれなかった。

すべてを説明せず、写真のように一方向から切り取る。少しひねくれていて、ユーモアがあって、改行がなくて、リズミカル。

「いつも時間をかけずに書くようにしてるんだけど、もう少しちゃんと考えて書いてみようかな。でも、そんなの誰が読みたいんだろうか」

その人は言う。私はもちろん、読みたいと伝えた。

「じゃあ、あなたが読んでくれるなら書くよ」

と、その人は文字で言った。

月曜日。まだ来ない。火曜日も水曜日も。そういえば、あの人は木曜日まで忙しいのだった。

金曜日、古い映画のサウンドトラックを聴いていたら、その人の文章がやっと、届いた。

決して「あなたに向けて書く」なんて言われていないし、「あなたのために書く」とも言われていない。だけど、私に向けて書かれたかのように読んだ。

それはいつもと違って、詩のようだった。

涙がこぼれる。右、左、と時間差で。

「あなたが読んでくれるなら」という思いで書かれた文章を、読んだことのある人がいるだろうか。「好きな人」が書いた文章ではなく、「大好きな文章を書く人」の作品として。

少なくとも、私は初めてだった。

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