見出し画像

ほくろ仮面…余命宣告までカウントダウン

「検査の結果ですが、悪性だということで…」

1週間前、近くの皮膚科で念のためほくろの検査をお願いしていた私。結果を聞きに再びクリニックを訪れた私に、そわそわが隠せないお医者様はあれやこれや何度も同じことを繰り返していた。私は心の中で

『ん?先生、それはさっきも聞きましたけど(*_*)』

とツッコミつつも、実際に私から質問する隙を与えず、結局3回も同じことを、少し早口で繰り返していた。

「悪性度の高い癌なので」

これもさーんかーいめー!
うむ、これまで、ステージが何番目、というのは聞いたことあったけど、悪性度が高いとか低いとか、聞いたことなかった。

「ネットでお調べになるとご心配になるような事を目にするかと思いますが、近年有効なお薬も出てきておりますので…」

とにかくお医者様は、私はすぐにでも大きな病院へ行って検査と手術をしなければならないこと、少しは希望もあるかもしれませんよ、というような思いやりの言葉をどうにか探しては伝えようと必死だった。とても優しいお医者様の想いが伝わり、泣いたり悲しんだりしちゃいけないと思った。

「あの、すみません、悪性度が高い、というのがよく分からなくて、どういうことなのか教えて下さいますか?」

と私。ここへ来てついに質問のチャーーーーーンス!

「ええと、それはですね…」

お医者様はまた私を悲しませたくない症候群に戻り、一生懸命同じことをやっぱり早口で繰り返しながら、『悪性黒色腫』とボールペンで書いた小さなメモ紙を私に手渡した。

実際、私は「メラノーマ」という、皮膚癌の中でも放っとくと全身に転移してしまう種類の、悪性度の高い癌患者になってたのだ。

気が付いたのは多分2年くらい前。右の太腿にちょっと目立つほくろが急に出来た。厚みも少しある。

メラノーマの事は以前から知っててすぐネットで調べたけど、それから全然大きくもならない、何の変化もないから時々またネットで調べては、私のほくろはメラノーマじゃないんだな、とその度に確信すら持ってた。

でも…
『悪性度の高い癌』って?

皮膚癌と言えばメラノーマの事、と思い込んでたけど、実はいくつか種類がある、なんて知らなかった私は、頭の中にたくさんのハテナ???を浮かべながら

『悪性度が高いって先生さっきからおっしゃってるけど、末期が近いとかそーゆーこと?』

と、どうにかお医者様の告知をちゃんと理解出来ましたよ、のアピールにこぎつけようとした。

『これ以上ここに居たら、先生が辛くなる。』

そう思った私は、ひとつだけ質問した。

「手術してすぐ家に帰れますか?」

受験生の娘もいる、毎日泥んこになって帰って来るチビもいる。美味しいご飯をいっぱい作って、擦り傷坊やの手当てをして、娘の進路の相談に乗って、お洗濯をして…私、家族の応援で忙しいんです、先生!そんな気持ちが溢れてた。

結局、手術と治療で1カ月くらい入院するでしょう。とのこと。

(°_°)

『へ?』


『1ヵ月??』


『癌の治療って放射線治療というやつ???』

もうこれ以上はネットで調べるか大きな病院で質問しようと決意し、お医者様や看護師さん達には丁寧に御礼とご挨拶をしてクリニックを離れた。

『悪性度の高い癌て…何やろか?』

もう秋だとは思えないほどの青空の元で、私は癌患者1日目をスタートさせたのだ。

ほくろだと信じてたのにっ!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?