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旅する日本語

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コンテスト「旅する日本語」に応募した400字エッセイ
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#麗らか

夜鳴きそば

雪がちらつく、夜の温泉街。呼吸をするたび、白い湯気が暗闇の中に吸い込まれていく。 宿に戻り温泉へ。冷えた体も温まり、部屋に戻ろうとした時「見てこれ、夜鳴きそばだって」と友人が立ち止まった。 この宿には、夜食として半玉のラーメンを振る舞うサービスがあるらしい。 私たちは迷わず食事処に入った。 囲炉裏を目の前にして座り、ラーメンをすする。時計は23時を指していた。 ふだんは後ろめたさを感じる夜食も、この時ばかりは気にせず食べる。やっぱり、夜に食べるラーメンは格別だ。