見出し画像

廃城姫

 

    王女は廃墟で手紙を書く
 そこは彼女ら王族のかつての居城で
 飢饉と戦(いくさ)で国ごと滅んだ
 格差社会の行き着く果てだ
 以前ここを訪れた東洋の詩人は一掬のナミダを注いで
 兵どもが夢の跡
 などと詠ったものである


 荒野では亡霊となったハムレットがさ迷っている
(それが憑在論といふやつかね?)
 奴さん、青白い顔でやけに深刻そうだけれど
 王女ときたら鼻歌まじりで暢気なものだ
 強き者よ、汝の名は……
 襤褸のような衣裳に 宝石の欠けた王冠
 それでもフシギとみすぼらしくはない

ここから先は

412字

いくつかの短篇といくつかの詩。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?