鋼の鎧が脱げなくて
とある媒体のインタビューを受けた。結婚してから初めてのこと。
既婚者となりそれを公表したことで、これまでタブーとしてきたこと(例えば夫と2人で普通に街を歩くとか)があれこれ解禁されたわけだけど、いや、解禁されたわけ、な、の、にっ!
20年かけてガチガチに装備してしまった鋼の鎧(はがねのよろい)が全っ然脱げない……!
「これからどんな夫婦になっていきたいですか?」
ほんわかとしたステキな質問だ。
他人のインタビュー記事だったらそう思う。
ところが、これまでカレシの「カ」の字も発してこなかった私はタジタジになっていた。自由を手に入れてこれからは攻め攻めでいくぞ!と意気込んでいたはずが、口から出るのは逃げ腰なまどろっこしい言葉ばかり。
取材が終わってひとりになった途端、目からぶわっと汗が流れてきた。なんだこの滝汗。止まらない。
親身に寄り添ってくださるインタビュアーさんが相手だというのに、ホント情けなかった。不甲斐なかった。こんなに自由なのに、こんなに不自由なのはなぜだろう。
この厄介な鎧を作り上げたのは、年季の入った伊藤えみ専用ヘンテコ善悪物差しだ。今まではそれなりに役に立ったし感謝もしているけれど、もうお役御免だ!
いっそのこと誰かへし折ってくれないだろうか?
……いや、違う。
自分の物差しは自分でしか折れないことを私は知っている。
だけど残念ながら今の握力じゃ歯が立たない。
さあ、筋トレ、筋トレ!
物差しを折り、鎧を脱ぐその日まで。
ゆっくりじっくりやっていこう。
こうして私の人生第二章が始まる。
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