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味気ない空間でものをかくと、無味乾燥な文章しか書けない

味気ない空間でものをかくと、無味乾燥な文章しか書けない。
某カフェチェーンでは人の出入りが激しく、接客マニュアルに沿ってしゃべる店員に注文をとられるのがいつもの光景。「ありがとうございます。」わたしが注文したカフェラテを手渡す店員の、とっても素敵な笑顔が、かえってむなしい。きっとここが秋葉原の、駅から徒歩30秒のカフェだということもあるのだろう。落ち着かなくて集中できず、イヤホンに手を伸ばした。

イヤホンで耳をふさぐのは好きじゃないけれど、まわりの感覚を遮断したいときはよくこの魔法を使う。たとえば満員電車のなかで、むさ苦しいスーツのおじさんとヒールのお姉さんにはさまれて、赤の他人と話もせずこんなに近くで肌を触れ合わせるなんて信じられないと思うときとか、お酒と汗と人間の息の臭いが充満した総武線千葉行きの電車に乗らないと家に帰れないときとか。普通だったら気を失うくらい気持ち悪いときに、イヤホンから流れてくる音楽で耳をふさぐのだ。この魔法は、音楽が流れている間だけは、わたしがその曲の主人公になったみたいに感じられるようになるという魔法だ。妙に感傷的な気分にもなれるし、大恋愛の末に別れを告げられたヒロインみたいに自暴自棄な気分にもなれる。ど直球に「好きだ!」とか言えちゃう青春真っ只中な高校生にも、なんだか人生で大切なことに気付いてしまった思春期の若者にも、、、吐き気のする現状にBGMがつけば、立派なワンシーンになるみたいに、気持ち悪いなりに気持ち良くなれるからこれは魔法なのだ。

....すっかりカフェにいることを忘れていた。そろそろこの、落ち着かないチェーン店を出よう。今日はこれから、チェーン店じゃなく、パリのカフェについてものかきをする。


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