持ち手がチェーンのバッグに目覚めた日

最近、キラキラしたブーツを購入した。
そのブーツのヒールは8センチで、空気を吸い込んだら「アーッ」と思わず叫んでしまいそうに心地の良い秋晴れだった今日、初めてそれを履いて夫とお出かけした。
8センチ分背丈の増した私は、足元が目に入るたびにキュンとしながら闊歩し....ようとしたけれど、数時間でいつもの3倍早く休憩が必要な体になってしまった。しまいには夫と二人で行く予定だった素敵な場所へ行くことを断念し、夫に一人で行ってもらうことになってしまった。なぜならその素敵な場所には素敵な人がいっぱいいて、初めて体験する8センチのヒールでボロボロになった余裕のひとかけらもない自分は、素敵な人たちに笑顔も優しさも見せられる気がしなかった。私は素敵な人たちにはなるべく優しくしたく、でも満身創痍の自分がそれをするには8センチ以上の精神的な背伸びが必要だと感じ、おそらくその息苦しさは素敵な人たちにも伝わるだろうし、結果的に自分も誰も幸せにならない気がしたので、無理をしないことを選択した。
今思えばボロボロならボロボロなまま、「いやはや8センチのヒールにコテンパンにやられまして」とか言いながら自分を笑い飛ばし、素の自分全開にしてちゃっかり椅子にでも座らせてもらえれば、それはそれで和やか且つ休憩もできたので良かったのではないかとも思うけれど、同時に、あの時の自分はそれすら浮かばないほどに余裕がなかったのだから、やっぱりあの選択が最善だったのだ。

それはそれとして、夫と行きたかった場所へ行けなかったことに私は冗談抜きで深く絶望した。なので、夫を待っている間に絶望の淵から帰ってきたのち、ヒール靴の履き方を調べた。詳細は割愛するけれど、目からウロコのお役立ち情報に触れることができ、私の中の「ヒール靴でいくらでも歩き続けられるウーマン」を目指す心に火がついた。その結果、夫と合流後は全ての歩く瞬間を練習のチャンスと捉え、お役立ち情報を実践した。ヒールで歩くことに対して非常に後ろ向きになっていた自分が、絶望を希望に変えて攻めの姿勢に入れたことは非常に良かった。

と、このように、今日はヒール靴でも余裕綽綽な新たな自分への偉大な一歩を踏み出したわけだが、そもそも何が言いたかったかと言うと、最初に書いた通りこのブーツはキラキラしている。そしてこのブーツを履いたところ、生まれて初めての現象が起きたのだ。それは、「バッグにもキラキラを投入してブーツを全身のスタイルに馴染ませたくなる」という現象。そこで浮かんだのが持ち手がチェーンのバッグ。実用性と平和を割と大事にする私は生まれてから一度もこのヘビー級且つ暴力性の高いバッグに魅力を感じたことがなかったが、今日ばかりは結構真剣に欲しくなった。ただそれだけのことが言いたかった。

そういえば、昔誰かが、「瑛光麗さんは、お米かダイヤか選べと言われたら迷わずお米を選びそうだけれど、ダイヤを選ぶことがあったっていいのよ」と言ってくれたことがある。その人に今、「私、持ち手がチェーンのバッグを買いましたよ」と言ったら手を叩いて喜んでくれそうな気がする。

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