見出し画像

もう一度人生に恋したい時に読みたい本。ミヒャエル・エンデ 「モモ」


いつからだろう…



私の世界が灰色になり
心のトキメキや喜びが
消えてしまったのは…


私の世界がトキメキで満ちていたのは
間違いなく小学生の時の夏休みだ。


毎日のラジオ体操が楽しみで
ワクワクしながら目を覚ましていた。


大人たちがまだ寝ている中
私は期待に満ちて目を覚ました。


妹も目を覚まし
さぁ、今日という冒険が始まる!


夏なのにひんやり冷たい空気が
とても澄んでいて美しく


朝日が少しずつ登り始め
雑草の上の朝露がキラキラ輝き


朝だけしか会えない朝顔の花に
少しだけ胸がトキメキを感じた。


近所の子供達が公園に集まり
毎度お馴染みのラジオ体操第一
がはじまる。


終わったらカードに印鑑を押してもらい
毎日参加すれば駄菓子の詰め合わせが
もらえるのがとても嬉しかった。


帰ったら朝ごはんを食べて
10時になったら外に出てもいいので
ウズウズしてその時を待った。


毎日毎日が冒険で
蝉を捕まえたり
絵を描いたり
ボールで遊んだり


アリでレースしたり
一輪車で旅をしたり
オバケ探しに出たり
秘密の場所でおやつ食べたり


この時間が一生続けばいいのに…
そう思わずにはいられない程
毎日が自由で輝いていた。


その瞬間瞬間が当時の私にとっては
非日常で宝物のような日々だった。


小学生から中学生になり
部活や勉強を頑張ることで
大人たちが喜ぶことに気づき


友達を作り
グループに所属することで
自分の居場所を確保していた。


私は勉強も部活もしてるし
友達もいる「真っ当な人間です」
と言えるように頑張った。


だけど本当は嫌で
たまらなかった。


放課後に部活などせず
子供の頃みたいに早く帰って
外で遊んでいたかった。


だけど、そんな中学生は
どこにもいなかった。


そんな子供みたいなことが
許される年齢ではなかったのだ。


部活と勉強を頑張れば
いい就職先も見つかるし


素晴らしい大人になれ
ちゃんとした人間になれ


幸せな生活が送れるのだと
思い込むようになっていった。


だけど私の周りに
幸せそうな大人は一人もいなかった。


そんな大人たちの言うことが
本当に正しいとは思えなかったけど
私にも正解が分からなかった。


大人になるにつれ
世界は灰色になり


トキメキや煌めきが消えていき
私の心は死んでいった。


世界が輝きで満ちていたあの夏休み
私は今よりも幸せだったのに。


蝉の声が愛おしく
朝露の輝きが美しく
鳥の声が心を躍らせ


私は、色鮮やかな
面白くて、美しくて、楽しい
世界に住んでいたのに。


夢見る少女だった私は
霧の向こうの不思議な町
と言う本が大好きで


きっと私もいつか
魔法の扉のようなものを見つけ
不思議な世界へ飛んでいき


私を待っていた運命の人に出会い
たくさんの冒険をするんだと
どこかで夢を見ていた。


そして
それは本当に起こるはずだと
どこかで信じていた。


だけど


私の世界が完全に灰色になった時
もう夢見て生きるのは辞めようと思った。


そんなことしても
なんの意味もないし
なんの足しにもならない。


そんな空想で生きていけるほど
現実は甘くない。期待するだけ無駄だ。


そうして、ますます灰色の世界の
住人に私はなっていったのだ。





昨日
ミヒャエル・エンデの「モモ」
という児童文学を読み終わった。


それは子供向けとは思えず
むしろ大人に向けた作品だと
私は思った。


灰色の男たちがすすめる
時間貯蓄銀行に自分の時間を預け



1秒でも時間を節約するために
スピード、効率、生産性を上げ


子供達と話す時間もなく
食事をゆっくり食べる時間もなく



スケジュールをこなす日々に
ひたすら追われる人間たち。


そんなモモの友人たちの時間を
灰色の男たちから取り戻す
というお話だった。


この本を読み終わった時
なぜ私の世界が灰色になったのか
その全ての謎が解けた気がした。


私もまた、灰色の男たちに
時間を預けていたからだ。


私は何者かになるために
一分一秒も無駄にはできない!と。


モモを読んで
忘れていたウキウキ感やトキメキ感が
蘇ってきたように思う。


心が命を吹き返したのだ。


世界は本当は
もっと素敵な場所かもしれない。


子供の頃に夢見たような
魔法のような世界はあるはずだ…
そんなウキウキ感が湧いてくる。


灰色の世界に住んでる人たちが
忘れてしまった宝物が「モモ」
には詰まっていた。


そこには
あの頃のトキメキが詰まっていた。


失った輝きを探しに
子供の世界へ飛んでみようか。



私はもう一度
世界にトキメクことが
できそうな気がする。



最後までお読みいただき、ありがとうございます♡