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「きみはほんとうにステキだね」

Aさんが終わりの会で、初めて「今日のキラキラさん」に選ばれた。これは日直が今日キラキラしていたお友達を選ぶコーナーだ。

Aさんは、とっても機嫌のいい時は、お腹の底から「んー」とか「ひー」とか引き笑いのような声を出す。普段刺激がないとボーっと自分の世界にこもってしまうので、手を握っておしゃべりをする。話はよくわかってくれているんじゃないかな。反応するのに10秒かかるので、待ってもらえれば目を合わせて「うん!そう!」と意思疎通ができる。

Aさんの鉛筆には緑色の筒のような補助具が付いている。ヨガマットのような柔らかさで握りやすい。今はぎゅっと握る時間が少しでも長く保てるように練習中だ。最近、握る力が強くなってきた。でも腕を自由に動かすことはまだ難しい。手先の訓練として線なぞりや、板書も支えながら書いている。

そんなAさんが今日キラキラしていたと日直のお隣さんは感じていたらしい。このBさんはマイワールドによくお散歩に行っているので、あまり他人に関心を示さない。授業中も筆箱を壁にして、手前のスペースで消しゴムの住人がいろんな冒険を繰り広げている。私は「聞くよ!」「見るよ!」の声かけをほぼ毎日している。Aさんに進んで声をかけたりはしないような子だ。

そういえばそんなBさんもじーっと聴いている場面があった。私はみんながテストのお直しの時間、Aさんに『きみはほんとうにステキだね』(宮西達也著)の読み聞かせをしていた。惚れ惚れする内容で、大好きな一冊になった。気付いたらお隣のBさんもじーっと絵本のお話に耳を傾けて、いやじっと本をみつめて聴いていた。

そんなステキな時間を共有したから、BさんはAさんに近づいたんじゃないかなと。

とにかく終わりの会で「今日のキラキラさんはAさんです!」「理由は鉛筆を頑張っていたからです。」と聴いた時、うるっときたのでうつむいてしまった。あの場面は動画でしっかり心に記録した。

お隣なのに1番遠い場所にいたBさんが、本当にお隣に来てくれた。

「きみはほんとうにステキだね」まさにこの絵本のようだ。ありがとう。

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