ごまめの歯ぎしりレビュー 記者会見12月5日

地方公共団体の調達の手続のデジタル化とのこと。基本的な方向性はまあ賛同できるのだが、考え方に繊細さというか細かな配慮が欠けているように感じる。

公共事業や物品やサービスの調達といった自治体の調達の手続に関して、入札の参加資格の申請や契約書の内容が自治体ごとにバラバラで、人手の少ないスタートアップが自治体の調達になかなか参入できない状況だと言われています。

自治体ごとに手続きが違うのは、やはりそれぞれの自治体にそれぞれ考え方があるから、という可能性も十分にあるわけで、それを単に統一すれば良いということでもないように感じる。参加資格が不条理に限定されるのはどうかとは思うが、かと言って統一的な手続きになったからと言って、それは却って全国展開している大企業に有利になる可能性が高く、地元の情報をしっかりと持っているローカルベンチャーの参入余地を狭くする可能性すらもある。

自治体の調達市場におけるスタートアップのシェアはわずか0.7%に過ぎないというデータもあります。

自治体の調達についてスタートアップのシェアが低いとのことだが、まずは、これが金額ベースにしろ、件数ベース(それならばあまりに低すぎるという感じはするが)にしろ、全体におけるスタートアップ(その定義の問題もあるが)の比率と比較しないと意味のある数字にはならないだろう。
その上で、自治体調達は地域経済においては一つの信用のベンチマークとなっていることもあり、スタートアップが入りにくいというのは、その性質上ある程度は仕方のないことではないか、という気もする。

これが日本で革新的なサービスが普及しない理由の一つだろうと思います。

かなり枠組みが固定された自治体調達での比率が低いということが、革新的サービスが普及しない理由になるとは思えない。それはそもそも自治体調達、もっと言えば政府調達にどれほど革新的サービスを含ませられる余地があるにか、ということ次第なのではないかという気がする。もっとも、先日のガバメントクラウドのように、一般の人から見て中身が分かりにくく、あまりに受託者に裁量を振りすぎている調達のあり方というのが、そのモデルなのだとしたら、政府の企画力とは一体なんなのか、金を振り分けるだけがその仕事なのか、ということになり、政府の非効率性が浮き彫りになるだけだと感じる。そして結局受託したのが業界最大手とも言える業者だとなると、言っていることとやっていることが全く違うのではないか、という印象は拭えない。

公共調達の内容など、政策は地方分権で、地方それぞれで選択すべきですが、手続など共通化できるものは共通化する必要があります。

統一資格審査申請・調達情報検索サイトを見てみたが、2011年からのサイトをそのまま使い回しているようであまり使い勝手が良くない。調達ポータルは洗練されているので、これから手を加えてゆこうという方向性の中でのこの記者会見内容になるのだろうと推測した。これを見る限り、地方自治体どうこういうよりも、まずはこのサイトで、例えば登記情報や税務情報とAPI接続するなどの利便性向上を行うことから始めるべきではないかと感じた。手続きを統一した結果、使い勝手の悪いシステムに統合されるなどということはあってはならないことで、統一を目指すのならば、まずは文句のつけようもないくらいのシステムを組んでからにすべきではないだろうか。

それが現場の負担軽減につながり、ひいては人手の少ないスタートアップの参入につながると思います。

現場の負担軽減の、現場の意味するところがよくわからない。申請側なのか、受付側なのか。みたところ申請側にとってそれほど使い勝手が良さそうではないというのは上に述べたとおりだが、受付側にとっても、ネット申請の環境が限定的な以上、データ入力の手間がそれほど削減できるわけでもなく、手続き以前にやはりシステム的な問題の方が多いように感じる。ネット申請のシステム改善が最善の方策なのだろうが、環境に合わせるためにOSとブラウザの最新状況に常に合わせてゆくというのがかなりの負担なのではないかと感じられる。それなら政府共通でウェブサイトの要件を定め、それを見るための専用ブラウザを開発してそこから見れば政府がらみはとりあえず最適化されて見ることができる、という状況にした方が、コストは削減できるのかもしれない。

自治体ごとにばらばらになっている調達に関する手続の標準化・デジタル化をしっかり進めていきます。

現状見たところ、手続の標準化よりも、取り扱っているデータの集約といったところから始めた方が良いのでは、と感じる。各自治体の調達情報のデータ様式だけを統一してそれを一覧できるようにし、どこからでも参加しやすいようにして、あとは政府の統一資格を持っていればどの自治体でも参加できるようにお願いする、といったことで、入札参加のハードルを下げてゆくというのが現実的ではないだろうか。
あとは、手続きでベンチャーを増やそうとするのならば、調達内容によって資本金制限や、新たな考えが求められる内容ならば設立年の制限、つまり設立後5年とか10年とか以内でないと参加できないようにする、といった形で限定的にハードルを下げることで新しい会社や小さな会社に配慮するといった仕組みが必要になるのかもしれない。もっとも、これは最初に書いた参加資格の不条理な限定に当たると解釈されるかもしれないので、しっかりとした説明は求められそう。

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