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広島から臨む未来、広島から顧みる歴史

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広島を基点に考える歴史と未来。 いかにして広島を寛容と対話の地域にしていけるか、などと大それたことを、余所者が考えています。広島にはその可能性が満ち満ちている、と考えていますが、…
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2023年9月の記事一覧

続・広島から顧みる歴史、広島から臨む未来(5)

地方自治の推移1前回郡区町村編制法のところまで見たが、そこからは自由民権運動が急速に活発化する。その点で、自由民権運動とは、近代化に伴い中央集権によって国家を動かしてゆこうという流れに対して、地方ごとの自治を重視して民権を強化しようという、ある意味で地方分権運動であったとも言えるのかもしれない。 自由民権運動と小田県 自由民権運動の始まりは、明治7年1月の板垣退助、後藤象二郎、小室信夫による『民撰議院設立建白書』を嚆矢とするのではないかと考えられるが、それは、小田県の統治

続・広島から顧みる歴史、広島から臨む未来 (4)

備後福山2さて、前回日清戦争のあたりで、大坂の陣の話を展開させながら、新政府が大阪にまでようやく進出したのでは、という推測まで進んだ。そうなると、日清戦争というのは、現状、清を相手に朝鮮半島を主戦場にして戦われたことになっているが、もしかしたら新政府の東方進出と同期して行われていた可能性があるのかもしれない。それが憲法制定や国会開設と重なっていることから、東方進出の錦の御旗として、憲法や国会を掲げて、まだ新政府を完全に信服していたわけではない地域に少しずつ入り込んでいったので

続・広島から顧みる歴史、広島から臨む未来(3)

戸籍制度と現代的アイデンティフィケーション今回はVisionary-Essayとして、自己証明のあり方について考えてみたい。 戸籍制度はなぜ導入されたか 戸籍制度の導入について少しみたが、実際のところ、なぜ戸籍制度が導入されたのか、そしてそれはいつだったのか、ということは詳しく精査しないとわからないのではないかと感じている。基本的な考えとしては、明治新政府が税を貨幣で徴収するための下準備として、地租改正に先立ってこれを行なった事になっているが、地租改正に戸籍が必須であると

続・広島から顧みる歴史、広島から臨む未来(2)

備後福山1備後地方の中心都市、福山市。駅を降りてすぐに聳える10万石には似つかわしくないほどの立派な天守を構えた福山城。草戸千軒という中世都市の流れを汲み(?)、南には瀬戸内随一の港で、一時期は室町幕府がその居を構えた鞆へとつながるなど、歴史的な要素には事欠かない街ではあるが、見てみると様々な違和感が去来する。結局その違和感のためか、あまり街を見て回ろうという気持ちにもならず、城とその隣の博物館だけを見て終わりにしてしまったので、それで一体何がわかるのか、と言われたら、その通

続・広島から顧みる歴史、広島から臨む未来(1)

5月、6月に続き再度広島を訪問してきた。大きく目指す流れは、寛容と対話の地・広島をいかに構想しうるかということであるが、広島といっても広島市というのが広島県の全てを代表しうるわけではないということはすでに述べた。そこで、今回は、広島を舞台としながらも、原爆に代表されるような広島市を中心とした固定的イメージに囚われることなく、いかに多様な広島イメージの相互尊重と交流を図っていけるのか、ということを考えてみるために再度の訪問をした。この訪問を通じて感じたこと、考えたことをまとめる