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若い世代が撮る水俣病「あめつちのことづて」豊田有希-熊本にゆかりのある写真家

海だけではなく山の住民も実は水俣病の被害を受けていた。

これは、熊本出身のわたしも全く知らなかった事実で、今年9月下旬に京都で開催されたPitch Grant(若手の写真家2名にそれぞれ10万円の助成金が授与されるコンペ)というイベントで豊田さんの話を聞いて初めて知った。

豊田有希さんは、アルバイトで生計を立てながら熊本の芦北町の黒岩地区で写真を撮り続けている女性だ。芦北町は間に津奈木町を挟んで水俣市から北東に20kmの位置にある。山間地域のため水俣病に関する調査も遅れたのだろう。海からの行商人がかつて黒岩地区を訪れ、魚介の幸を住民たちが享受していたのだという。

昨年、2019年の夏につなぎ美術館で開催された豊田有希さんの個展「あめつちのことづて」では、過疎化が進む黒岩地区で暮らすお年寄りの農作業や地域の集まり、食事の風景など住民の日常に焦点を当てたモノクロの作品が展示された。水俣病に関連した取材ではあるが、消えゆく街の痕跡を残そうとする彼女の視点が垣間見れる。Pitch Grantのプレゼンの中で、「撮影の暴力性」について彼女が語っていたのが印象的だった。外から来た縁もゆかりもない人間が写真を撮るのは、最初は難しかっただろうなと思う。でも、彼女の謙虚な姿勢やゆったりとした温かい口調が住民の警戒心を解いていったのだろうと思う。





彼女は冒頭で書いたPitch Grantの初代受賞者に選出されたので、10万円の助成金をフィルム代などに当てて引き続き黒岩地区の写真を撮るそうだ。

来年はジョニー・デップがユージン・スミスを演じる映画『Minamata』が公開される。その流れで豊田さんの活動がちょっとでも世の中に知られてほしいなぁと願って止まない。

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