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都市と夜とインターネット 福居伸宏-徳島出身の写真家

わたしの徳島の記憶

昨年は二度も東京から徳島に足を運んだ。

夏に勤務先の大阪支社(といっても小さなコワーキングスペース)に行った日に、昼は4人でお好み焼きを食べ、夜はカプセルホテルの9hoursに宿泊し、翌日バスで高速鳴門の停車駅を目指した。

むかし徳島出身の大学教授が「あそこは山をくり抜いて作った美術館なんだよ」「昔はレストランにポカリスエットかボンカレーしかなかったんだ」と大塚国際美術館のことを話してくれたのを思い出しながら、心を弾ませてチケットを買ったのはよかった。しかし、まあ想像よりも遥かに広かったので大塚国際美術館をクタクタになりながら巡った記憶がある(帰りは美術館から大阪直行のバスに飛び乗り、夜には大阪のなんばパークスシネマでロレンソ・フェロの『永遠に僕のもの』を観た)。

2回目は春に医学部を卒業する妹のような友人に会いに真冬の12月に再び降り立った。徳島県立近代美術館にそのとき初めて行って驚いたのが、学芸員さんのあまりにも丁寧な解説が詰まった広報誌(大事にとってある)。それから、まさかのフェルナンド・ボテロの彫刻!をみた。あのぼってりした感じが絵画から飛び出していて衝撃的だった...。(徳島県立近代美術館の話は長くなるので、また今度...。本当に彫刻が充実してるんですよ。)


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(これまでフェルナンド・ボテロが彫刻をやってると知らなかったので、驚いて友人に送った一枚。上の本の表紙の絵と比較してみて。)

徳島の写真文化と福居伸宏

今年3月に創業130年以上の立木写真館が破産
さて、徳島愛が溢れすぎて前置きが長くなってしまったが、徳島も例外ではなく、やはり写真文化の大きな過渡期にある。

かつて朝ドラ「なっちゃん」の舞台になった立木写真館は今年の3月に約4億7000万円を抱えて破産してしまった。このことからも分かるように100年以上安泰だった商業写真業界も、今やデジカメやスマホの浸透で立ち行かなくなった。それが私たちの暮らす2020年。

でもでも!!!!韓国や台湾、中国、シンガポールでは写真を観る文化がめちゃくちゃ流行ってるんですよ。大規模な写真祭がいくつも開催されていて、海外からそれ目当てでアジアに旅行する機運が高まってる。(だから、私は何で日本では写真文化がこんなに廃れていくんだろうと、悔しくて悔しくてこういうnoteを書いてインターネットの隅っこで写真の面白さを伝える活動を始めたという。全く影響力はないけれど...。)

美術家であり写真家である福居伸宏さん
今日のnoteは脱線が甚だしくて恐縮だが、今回一番お伝えしたいのは、福居伸宏さんについて。福居伸宏さんを適切に捉えるのは、私よりも上手な人が他にいると思うので、私の「印象」について語りたいと思う。

北海道からずっと写真家について調べてきて、美術家、教育者、写真家を両立している方はなかなかいらっしゃらないなぁと思った。3つともやり続けるのは、かなりの情熱とエネルギーが必要だ。(少なくとも私には無理。)

まず、これは写真?絵画?と目を凝らしてもご本人にインタビューしてみなくては分からない作品。ニューヨークで1940年代後半から50年代にかけてジャクソン・ポロックが中心となって流行した抽象表現主義のような、心の内側から湧き出た勢いをモノクロの曲線の絡みで昇華する。ただ、ポロックと違うのは、絵の具を垂らすドロッピングではなく、リアルな筆、もしくはデジタル上の筆で曲線を縦横無尽にかき混ぜているところだ。

スクリーンショット 2020-04-29 17.57.27

ジャクソン・ポロック https://media.thisisgallery.com/20190374より

福居さんはインターネットが黎明期の頃から作品をオンラインに発表されていた方で、初期はmixiにも作品を掲載されていた写真家。人が利用するメディアにいち早く注目し、そこに合わせた作品の見せ方も研究されている方だと感じている。

そもそも、福居さんは都市の夜を撮る写真家の印象が強い。そこには人や動物は一切登場しない。無人の、無味の、無機質な写真。でもよく見ると人が灯した明かりや人が間違いなく設計した直線的な建造物が目に迫ってくるので、人間の存在は否定できない。その無人だが人の気配がするコントラストが鑑賞者の目を惹きつける。

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もう今期の募集は締め切りになっているが、福居伸宏さんは291 workshopとう名前のワークショップを開いていらっしゃる。ぜひ興味のある方は参加して欲しい。武蔵美で写真表現の授業をされているので、こちらのワークショップもかなり充実したものだと想像している。

2020年1月15日(水)~3月18日(水)[全10回]+補講 ※開催曜日が水曜日になりました。
https://www.facebook.com/291ws
https://ameblo.jp/291-workshop
https://twitter.com/291_workshop
◎募集要項
日時:毎週水曜日 19:00~22:30 
場所:TAP Gallery http://tapgallery.jp/ Tel/Fax 03-3643-6885
東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線 「清澄白河」駅 B2・A3出口徒歩5分
〒135-0022 東京都江東区三好3-2-8
会費:35,000円 
定員:12名
参加資格:作家を目指して写真作品の制作に取り組んでいる方(これから取り組もうとしている方)。年齢経歴不問 

探しても見つからなかったけれど、

福居さんの撮った鳴門大橋ってあるのかしら。

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