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#翻訳メモ 12.トライアルを受けるときにずっと聞いていたネットラジオ

星野源のファンだ。ファンと言っても、一度もライブに行ったことがない、ラジオを熱心に聞くタイプのファンだ。

星野源は現代のアンディ・ウォーホルだという印象を持っている。メディアをどのように使えば、広く大衆にメッセージが届くのか実験をし続けているからだ。インディーズバンドしか聴かないような音楽好きの人の中には、もしかしたらデビュー当時のギター一本で弾いていたような素朴な音楽の頃は好きだったが、ポップすぎる音楽になってファンを辞めた人もいるかもしれない。

私は言いたい。一部の人に聴いてもらう音楽から卒業して、どうしたら、自分のスタイルを崩さずに多くの人に聴いてもらえる音楽を作ることができるのか、挑戦し続けているのだと。そこが、かっこいいじゃん。

それ以外にも、私は個人的な恩があって星野源のファンをやっている。2016年に熊本地震があった際に筑波大学で院生をやっていたのだが、一人でいるとき家族を心配しすぎて涙が止まらなくなったとき、星野源の「Crazy Crazy」をずっと聴いて気持ちを落ち着かせていた。あのときはありがとね。

そして、今回。翻訳のトライアルを受けているときに、「あぁ、落ちたらどうしよう」と不安になってリピートで100回くらい聴いていたのがラジオ番組「Inner Vision Hour」だ。これは、AppleMusicが今年企画した60分のネットラジオ。(今年からAppleMusicは、増加し続けるコンテンツをキュレーションして紹介するために独自にネットラジオをスタートした。)

「Inner Vision Hour」については、全ての回を何度も聴いたのだが、一番聴いたのは「突破」の回だ。ここでも、ラジオのあり方を星野源なりに考えて、企画がされているのが分かった。地方でよくある、とりあえず英語の発音が良すぎるパーソナリティを迎えたような、曲紹介でやたらとハイテンションになる形式のラジオではなく、静かに、ときには突然降り出した雨のASMRを背景に編集者の小田部仁さんとの雑談が続く。曲紹介はない。突然会話と会話の間に星野源が選曲した音楽がインサートされる。古今東西の、星野源の音楽の源流をたどるような選曲がとてもよい。こんな音楽を聴いてたのか、とファンを喜ばせてくれる。

小田部仁さんとの対談の中で、星野源は「初めて俳優の仕事をもらった話」をする。音楽か、俳優か、どちらか決めずに活動をしてきた星野源のデビューは遅い。しかし、あるとき「大人計画」の舞台のキャスティングで、音楽のできる俳優が必要になり、「自分がやります!」と手を挙げて、そのときに、星野源にチャンスがまわってきたそうだ。「あのとき手を挙げなかったら、ここに自分はいない。」「チャンスが来るまでやり続けてたのがよかった」って星野源が言う。孤独にひたすら作業をすることができたのは、このラジオのおかげ。ありがとう。

「突破」の回かどうかは忘れたけど「ものづくりをする人はキラキラしているように見えるけど、実際、疲れた人しかいない(笑)」だとか、「死にたいと思っていた時期があった」だとか、「阿佐ヶ谷の風呂なしアパートに住んでいてお金がないとき、100円のパンを買って、うまい!」って思った話だとか、かなりざっくばらんに話している。シーズン2をやりたいねぇ、とラジオの中で言っていたので、ぜひ、やってほしい!


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