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太宰治を撮った写真家 林忠彦−山口にゆかりのある写真家

2年前に六本木のFUJIFILM SQUAREで開催されていた林忠彦の写真展に行った。林忠彦といえば、「作家」を撮っていた写真家というイメージがある。太宰治が銀座の酒場ルパンで飲んでいる場面を抜いた一枚は有名かもしれない。

余談だけれど、鎌倉に「鎌倉文学会」という老若男女が会員の文藝クラブがあるらしい。そこの文藝クラブで歴史小説を書いている昔の会社の同僚が、「若い時は太宰を読みたがる、みんな死に憧れる時代があるんだよ、それを通り過ぎると、やりたいことをやるだけ」と言っていた。私は林忠彦の太宰の写真を見ると、その先輩のひとこととセットで眺めてしまう。

一口に写真家といっても、山に向かう人、海に向かう人、子どもに向かう人、それぞれだが、林のように作家に向かう人は稀だろう。

文豪ともなれば、カメラを向けられるのも嫌がるだろうし、信頼関係がなければ近寄ることさえ難しいと思う。林は作家たちにとって特殊な存在だったことは間違いない。

1918年に山口県の周南市の写真館の息子として生まれた林は、22歳でプロの写真家としてデビューしている。30歳のときに『小説新潮』の文士シリーズに太宰治らを掲載しはじめ、53歳で 『日本の作家』を出版、61歳で 『日本の画家108人』を世に送り出している。

今は林のように作家や画家を写真に撮り続けている写真家っているのだろうか、かなりコミュ力が高くないと務まらない仕事だろうと思う。



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