(最終回) 過激派 —千葉にゆかりのある写真家 北井一夫
今回は千葉にゆかりのある写真家、北井一夫さん。
shashasha(写々者)のオンラインショップで北井さんが1960年代に学生運動を記録した写真集『過激派』を買った。
当時は金銭的な理由で出版されなかったというエピソードがあり、(私の調べた限りでは)そのときのネガを大切に保管してた彼が半世紀を経て世に出したタイムマシーンのような本である。
北井一夫さんは日大の写真コースを半年で辞めた反骨心のある作家で、独学だけれど、第一回木村伊兵衛賞を受賞している人だ。
写真集をみるのとお酒を飲む作法は自分の中で似通っている
話は変わるけれど、一般的な本を読むときと写真集をみるときの決定的な違いが1つある。
それは、普通、本を読むときは後ろから、つまり「奥付け」や「あとがき」からみるけれど、写真集は必ず前から順番にみることだ。まずは、背景を知らずに、インパクト?に引き摺り込まれてその世界にどっぷり没入するのが好きだ。
これは、私の場合、お酒の楽しみ方と一緒。ビールやワインを楽しむときに生産者の意気込みや、生産過程や販売に至るまでのストーリーを知ってから、というよりも、いきなり飲んで味を確かめたい。で、そのあとで、生産にまつわる話を知りたいのだ。
しかし、写真集を前から読んでも、最後に「あとがき」がないこともある。(それは私にとってちょっと寂しい)
あとがきも、小話も、何もなく「写真だけ」で終わってしまう写真集は態度(?)が冷たいよ〜もっと優しくしてよ〜と思う。いわゆる、なかなか答えを教えてくれず、もどかしさを残すタイプだ。
『過激派』には「キャプション」も「あとがき」もない、だからこそ、さらに知りたくなる
ここで、話がちょっと戻るのだが、北井一夫の『過激派』は写真以外の情報が排除されている。
一枚一枚にキャプションがない。
あとがきで長々と「あの日は曇天で学生運動をしていた輩がヘルメットを被り、集っているところに出かけた。彼らの汗のしぶきが飛ぶほどの至近距離でシャッターを切って...」みたいな話は出てこない。
いくらページをめくっても、背景の情報がほぼない写真集は、「知りたい欲」をうまく引き出してくれるので、生活が謎に満ちたアイドルのように、その写真集の真相や物語を追いかけたくなる。こうやって北井一夫の世界に、沼に、林に、立ち入ってしまうんだろう。
shashashaについて
アジアの写真作品を国際的に紹介する機会を作りたいという思いで大西洋さんが2013年にスタートした会社。(shashashaについては、下のハマチャンネルさんのYoutubeが詳しい)
現在、大阪・豊中市で〈流れ雲旅〉展が開催中!
47都道府県の写真家について調べて書くシリーズも最終回。
最初の北海道の回が2020年3月2日だったので、ちょうど1年。
このシリーズは、コロナだから始めたというよりも、ちょうど書こうと思い立った時期と自宅待機が必要な期間が重なって書き進めてきた。
写真が無味乾燥な社会人生活に潤いをもたらしてくれたので、感謝したい。
そしてこの地味で自己満足なnoteを読み続けて下さった方、ありがとうございました!いつか、写真展に一緒に行きましょう。
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