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キューバに行った話をしよう(7)

長距離バスのこと

 そもそも色々ギリギリにことを進めていたこともあり、日本からキューバまでの航空券を手配できた時点でハバナからサンティアゴ・デ・クーバまでの国内線は既に席がありませんでした。どのみち飛行機は高くつくため別の方法で移動しようと思ってはいたので、その時点で手段はツーリスト向けの長距離バス一択となり、ハバナ、サンティアゴ・デ・クーバ間の行き帰りでキューバの長距離バスを満喫することとなりました。片道880㎞。先に結論から言ってしまうと、次に行くときは、迷わず飛行機のチケットを取れる身分になっていたいと切に願います。

往路のバス手配で焦る

 もちろん飛行機、バス以外にも手段はあります。しかし他の手段は現地の勝手もスペイン語もわからない私にとって現実的ではありませんでした。ネットやガイドブックで調べると、ツーリスト向けの長距離バスはViazulしか紹介がなく、これも一択。とりあえず同社のホームページを見てみると1週間前までならネットで予約できるしバスターミナルもあるから大丈夫そうだ、ということで予約手続きを進めようとするとなぜか予約できない。おかしい。まだ乗車日まで10日以上あるというのにどういうことだ。空席はあるのに確定できない。ここで問い合わせメールを送ったところで相手はキューバの会社、即答は9割8分望めない。しかし前後の予定は決めてしまって宿も予約済みだから、なんとか予定の日にサンティアゴに到着したいし。

 既にサンティアゴでお世話になる宿のお母さんであるケイトにはバスの到着予定日時を伝えてしまっていたので、再度現状を連絡し、このまま予約が取れなかったときは乗合タクシーつかまえてなんとか行くからとメールを送ったところ、なんとまあ、バス、あっさり手配してくれました。Cubanacanという全く異なる会社で、日本ではほとんど情報が拾えませんが、理由はよくわかりません。海外ツーリスト向けではないのかしら?

 とにもかくにも、宿主へのメール一本で往路のバスは手配できてしまいました。サンティアゴまでの足は自分で手配しなきゃとばかり思っていたので、そこに結構時間も費やしたしで、かなり拍子抜け。ただViazulの手配、経路、運行時間等々には妙に詳しくなりました。

バスが来なくて焦る

 このマガジンの(6)に記した通り、サンティアゴ・デ・クーバ行きの長距離バス乗り場はホテルTulipànということで、余裕を持って乗車時刻を待っていると、どうやら複数台のバスの乗り場になっているらしく次から次へとバスが入ってくるのですが、日本みたいに行き先やらバス会社の名前やらがわかりやすく表示されているわけでもないので一体自分の乗るバスがどれなんだかさっぱりわからないし、あっちでもこっちでも適当に点呼してるしで、うっかりしてるとこれは積み残される可能性大だなと、かなり緊張しました。そしてその時点で既に出発予定時刻を相当にオーバーしているもんだから焦りも出てきて、近くにいる人にCubanacan?とかSantiago?とか聞いても「は?」みたいな顔をされて、気付けば英語を話せそうな西洋人系ツーリストたちがもうほとんどいない!もしかして本当に取り残されたんじゃないか、これ?もう出発時刻1時間近くオーバーしてるからありえるなー、まずいなー、大丈夫か?…

 片っ端から点呼してるバスの近くに寄って行って、呼ばれなければ次のバスへ、と繰り返し、ずいぶん乗客の姿が減った頃にそのときはきました。

 日本語の「Kawanishi」は発音しづらかったようで、2、3度読み直して、半ば諦めがちのバススタッフ。私もすぐには気付かず危うくスルーしかけました。「wa」が言いにくいのかしら?ともあれ乗るべきバスは、来ました。

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日の出と共に走り出すバス、いざサンティアゴ・デ・クーバへ

 バス自体はそれなり。日本で4列標準シートの夜行バスに乗るのとそう変わりない感じです。身体の小さい私は全く不自由無し。予約制ですが自由席でした。ここから各拠点で乗客を拾いながらサンティアゴを目指して走ります。
 ハバナを離れるにつれ、のっぺりとした平坦な土地が広がるキューバ。時折すれ違う馬車や、荒地だか農地だか判別し難いようなところに建つ、今にも崩れそうな建屋と風に揺れるおもむろに干された洗濯物。走行中、現在地確認のために地図アプリ「maps.me」(4Gだのwifiだの繋がってなくても使えるので重宝します)を見ていると、バスはキューバを貫くナシオナル高速道路をひた走る。ひたすらにひた走ります。同じ高速道路という名前でも日本のそれとは随分趣きが違うもんです。
 眼に映るものが新鮮で、しばらくはずっと外を眺めていましたが途中で気づきました。

全然景色が変わらん。

小さな島国で大きな山もなく、かつ東西に長いこの国は日本みたいに風景の変化がさほどないようで、しばらくすると車窓の景色に飽きてしまい、もうずーっと寝てました。

人生で初めて、休憩地のトイレ使用にお金を払う

 トイレについては出発前に色々と「行けばわかる」といろんな人が笑いながら教えてくれていたので覚悟はできていました。マイトイレットペーパーはもちろんのこと、ウェットティッシュに荷物掛け用のS字フック、そして、小銭!入り口にお金を入れる入れ物をもった人が待ち構えているので、お賽銭のようにお金を入れて利用します。因みに金額は帰国するまで謎でした。いくら?って聞くと大概1CUCと言われるけど、黙って25センターボ(1CUC=100センターボ)硬貨を入れても何も言われないところもありました。
 さて、お布施をして中へ入ると便座がありませんよ。あとね、何なの?みんな綺麗に使おうって意識、ないの?と言うわけで、用を足すときは洋式トイレなのに空気椅子。お金払って空気椅子。掃除だってたいしてしてない様子。

 いや、違う。キューバが悪いんじゃない。日本のサービスエリアのトイレが凄すぎるんだよな・・・。

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写真は最初の休憩地、サンクティ・スピリトゥス。

お腹がすいたけど買い物ができない

 みなさん売店で並ばないから、注文のタイミングがさっぱりわからない。そして声も身体も小さい私は為す術なく買い物を諦めるのでした。いずれにせよ言葉もわからない。ちょうどキューバのど真ん中あたりに位置するシエゴ・デ・アヴィラではかなり長い食事休憩もありましたが、乗り換えもあったうえに何時に出発するかわからず、レストランは満席、注文カウンターも人でいっぱい。例によって並ばない。すべてが面倒になった結果、自撮りしたり植物愛でたりして時間潰し。
 有事の際には一番に餓死しそうな生命力の弱さを自分に感じました。とほほ。

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シエゴ・デ・アヴィラはバスの乗り換えポイントのようです。ポカーンとしている私に「カンビオ!カンビオ!」と言ってくれていた意味がわかったのは随分と後のことです。別の女の子が「バスチェンジ!」と言ってくれてようやく理解。降りてからもサングラスに刺青だらけのギャングみたいなお兄さんが「サンティアゴ?サンティアゴ?」って聞いてくれてスーツケースをバスに積んでくれました。お手数おかけしてすみません。グラシアス。
 今思うとバスはtransgaviotaですね。観光バスかな?あまりよくわかってないのですが、cubanacanはホテルグループのようなので、ホテルがピックアップ場所になっているというのはそういうことかもしれません。

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巨大なティランジアがわさわさと着生する樹木。これは持ち帰りたい!

所要時間約16時間

 そんなこんなで小さな水筒の水とカロリーメイト的な食べ物400kcal分をチマチマと摂取し、そしてひたすら寝るというハバナからサンティアゴ・デ・クーバまでのバス旅は、かかった時間なんと16時間。880㎞の距離でこれはいくらなんでもかかりすぎだろう。とにかく一回一回休憩が長い、そして多い。さらには、偶然にも途中トラックの横転現場に出くわしたため、運転手はじめ乗客が全員下車して様子を見にいくというアクシデントもありました。事故やりたてみたいな状況だったから心配で見にいったんでしょうね。何にもできないけどみんな随分長いこと見守ってたな。運転手が脱出できてない、的な雰囲気だったけどどうなったんだろう。
 
 ともあれバスは無事にサンティアゴへ到着し、待ち構えたかのように「タクシー?タクシー?」と声をかけてくるタクシー運転手たちの出迎えを受けたのでした。

復路もまさかの16時間

 復路も朝6時過ぎにハバナ到着の予定が、着いたのは10時。キューバの長距離バスはこういうものかと。往復ともに出発から1時間以上遅れてたもんね。因みに復路のバスはViazulでした。要するにハバナ↔︎サンティアゴ・デ・クーバは所要時間16時間です。公式に12時間とあっても16時間です。とにかく寝て、起きて時間とマップを確認したときのがっかり感が強烈な16時間でした。

キューバの長距離バスは夜の車内が寒いことで有名です

 夜間に突入すると車内はかなり寒くなります。前情報を得ていたのでダウンジャケット着用で無事でしたが、現地の人も毛布かぶったりジャケット着たりしてて、なんなら運転手もジャケット着てます。

クーラー止めようよ。

 なお、どこかのタイミングでこのダウンジャケットを紛失し、帰りのバスで寒い思いをしたのは言うまでもありません。

ということで、できれば次は飛行機に乗りたい

 バスは5000円強くらいで済むので、それはそれでありがたいですが16時間はさすがにきつい。途中のランチとか、誰かとの会話とか楽しめたら全然違うんでしょうけど。確かに帰りは隣のおっちゃんが英語話せる人だったのと、キューバ自体に慣れたことで随分精神的に余裕がありました。

けど。やっぱり飛行機がいいです。

 

 



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