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ともし火 -彼-

カフェで待ち合わせたときの遠目に見た彼女のいる景色は、秋の始まりに合う少しロマンチックな絵のように見えた。 ああ、この人だ。と思いつつ、その景色を見ていたくてその場に少しと留まって眺めていた。 彼女の少し緊張したような面持ちが自分を高揚させる。 ここから新しい物語が始まるような淡い期待が自分の心をときめかせた。 彼女の座る席に近づくとテーブルに置いてあるキャンドルの灯が揺らぎ、彼女の柔そうな髪と、窓の外に見える街路樹の葉が一斉に動きを見せた。 そして人懐っこい彼女の笑顔が

    • ともし火 -彼女-

      いつもと違う道を歩けば違う世界へ行ける気がして、仕事帰りの道をちょっとずつ変えてみた。 でも考えは混沌として小さな光さえも見つけられない。 「なんでいつもこうなんだろう」 恋愛だけじゃない。仕事も同じ。 いいところまで来たな、という場面で邪魔が入ったり、呆気なく奪われてしまう。また同じだ。 人生に付きまとう残念な結末。 「思いきってあのBARにでも行ってみようか…」 1人で入るのは気が引けたが、せっかくいいお店を知っているんだからと立ち寄った。 半地下にあるそのBARは今日も

    ともし火 -彼-