マウスの顕微授精で孫世代にも影響があった研究について
【ご質問原文】
初めまして。
顕微授精で授かった娘がおりますが、先日、京都大学の研究でとても不安になる記事を見つけました。
『マウス顕微授精により引き起こされた経世代異常のメカニズム解明』
こちらには子供には問題なくても、次世代に影響ありと書かれています。
顕微授精がほんの少し障害児の確率が上がることは知っていましたが、娘は今のところ順調なので、安心していました。
でもまさか次世代にまで影響あるとは夢にも思いませんでした。
娘の子供はどうなるのでしょうか。
そして娘の孫はどうなるのでしょうか。
娘にとんでもない事を背負わしてしまったような気がして、涙が止まりません。
【回答】
ご質問ありがとうございます。
これは、顕微授精(ICSI)を行っている方はかなり不安になる内容だと思います。
私としてもこのままスルーしてはいけない内容だと思うので、論文を読み解いて行きましょう。
また、マウスを使った研究経験もあるので、マウスとヒトの違いも含めて考察したいと思います。
論文概要
まず、この論文の原文は
Intracytoplasmic sperm injection induces transgenerational abnormalities in mice
という論文です。
京都大学の研究チームが発表した論文で、割と良い雑誌に掲載されています。
何をした研究かというと、マウスの生殖幹細胞(GS)から体外培養で精子の元となる精原幹細胞(SSC)を作成し、別の雄マウスの精巣に移植してできた精子を使って受精させたマウス(F1マウスと言います)の健康への影響を調べた研究です。
この研究では、SSCを使って産まれたマウスの影響だけでなく、そのマウスの子供(F2マウスと言います)への影響も見ています。
生殖幹細胞とは、卵子や精子になることのできる細胞ですね。
この細胞を人為的に精子の元になるような細胞に体外培養で誘導することで、無精子症の症例であっても精子を作ることができます。
もちろん、まだヒトでは実施されていませんが、もし実用化できれば無精子症でも子供を望むことができるかもしれない技術です。
今後、ヒトに応用する可能性を考えた時に、GS由来の精子を使用して産まれた子供にどんな影響があるかを調べようというのがもともとの論文の目的でした。
GS由来の子の影響を調べるために、比較対象(コントロール)として
⚪︎体内で作られた精子を用いてICSIして産まれたマウス
⚪︎自然交配によって産まれたマウス
この2種類が用意されて、さまざまな解析がGS由来マウスと同様に行われました。
その結果、GS由来マウスだけでなく
通常のICSIで産まれたマウスと、その子供世代であるF2マウス(孫世代)にもさまざまな健康異常が見つかった
と言うのです。
どのような研究をしていたか、そしてどのような結果からこのような結論に至ったのか、詳細を見ていきましょう。
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