なぜ、正常胚盤胞を移植したのに着床しないのか?
どうも!ぶらす室長です!
いつものように調べ物で論文検索をしていたら、何やら面白そうな論文を見つけたので、レビューしようと思います。
タイトルは
Opening the black box: why do euploid blastocysts fail to implant? A systematic review and meta-analysis
ブラックボックスを開けよう!
なぜ、正常胚盤胞が着床しないのか?
攻めた論文タイトルですね!
残念ながら、abstractしか読めなかったのですが、結構なボリュームがあるので解説していきます。
ブラックボックスは果たして開くのでしょうか???
◯ 着床のブラックボックス??
PGT-Aを行なって、染色体が正常と判定された胚を移植するのは、最も強く着床を予測できるものです。
しかし、正常胚移植の陽性率は50-60%よりも高くなっていません。
このギャップを説明するために用いられるのが、「the black box of implantation」というフレーズ。
日本語だと「着床のブラックボックス」と言います。
なんやねんブラックボックスって!
って感じですよね。このフレーズは科学でたまに使われている隠語??で
「このメカニズムは中身が見えない黒い箱です」って時に使います。
つまり「よくわかんねぇー」って言うのをカッコよく言っているんですね。
着床のメカニズムってのは動物研究でもまだわかっていない事が多いです。
人口子宮はたくさんの研究者が昔から研究してますが、まだまだ動物でも実用化できていません。
それが何を意味するかと言うと、着床や胎児発育をin vitro(体外)で完全に再現できるモデルがまだないという事になります。
発育段階別に切り取って詳細解析ができないということですね。
様々な機能や機構が働いているのは明らかなのに、何がどうなっているかよくわからない。
それが、着床のメカニズム。
The ブラックボックス!!
さぁ箱を開きにいきましょう。
◯ 何を調べたか?
この論文はシステマティックレビュー&メタ解析論文ですので、いろんな論文を調べて着床に関わっていそうな因子をピックアップし、再度統計解析しています。
調べた因子は、胚由来、母体由来、父体由来、臨床的プロトコールが染色体正常胚盤胞移植の成功と不成功に関与しているかを調べています。
372報の論文を調査して、そのうち335報がレトロ(後ろ向き観察)な研究、30報が前向き研究、7報がRCTでした。また、うち41報がレビュー論文でした。
当然ですけど、ほとんどがレトロな研究ですね。
さてさて、結果を見ていきます!
結果では、それぞれ黒字にしたOR(オッズ比)を見ましょう。
私の解説でしょっちゅう出てくるオッズ比です。だいたいもうわかりますよね?
これが1.0より小さいということは、着床にネガティブに働いているということになります。
例えば、オッズ比が0.50なら着床する確率が半分になるとざっくり解釈できます。
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