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タイムラプスインキュベーターとは?

【ご質問原文】

相談というより、ただ興味があっての質問なので申し訳ないのですが……タイムラプス?を使った培養をしたことはありますか?

また、したことがあったらタイムラプスを使うことにより何か成功しやすいなどのメリットは感じましたか?

ネットで調べても「受精卵にとって優しい環境での培養が可能」と出てくるだけで、何故タイムラプスで撮影すると優しい環境になるのかよくわからず……教えていただけると嬉しいです。

【回答】

ご質問ありがとうございます。
先進医療にもなっているタイムラプスインキュベーター、その原理と利点について解説したいと思います。

タイムラプスとは


タイムラプス撮影って知ってますか?
一度は聞いた事はあると思います。
最近では、iphoneなどのスマホでも撮影することのできる撮影手法のひとつです。

定点カメラで定時に写真を撮り続け、その画像をつなぎ合わせることで動画を作ります。

夜空の星の動きを見たり、何かの制作過程を早送りで見たりする動画撮影に使われるのを見た事があると思います。

それを、受精卵の観察のために使用しているのがタイムラプスインキュベーターです。

胚を培養する機器インキュベーターとは?


本来、卵子や受精卵は卵巣、卵管、子宮という体内環境で発育します。

体内は体外とは異なり、光はあたりませんし、我々哺乳類の体温は一定なので、温度も37.0度くらいで保たれています。(発熱時などを除く)

また、受精卵が発育する卵管や子宮内は液で満たされていると考えられており、それらは受精卵にとって最適な状態(pHや浸透圧、温度など)になるようにできています。

そして、昔、卵管や子宮内の液の成分やpHを調べた人達がおり「なるほど、こんな環境で育ってるのね」という事で開発されたのが培養液です。

培養液のpHを一定に保つためには、大気下とは異なるガス濃度の部屋を作る必要がありました。
それが、インキュベーターです。

インキュベーターは、温度やガス濃度が常に一定に保たれるように制御された小さい冷蔵庫みたいな機器です。

画像: アステック社HPより

この機器の中に培養液と受精卵を入れる事で、体外で受精卵を育てる事ができます。

受精卵の観察には顕微鏡が必要

顕微鏡の説明は不要ですね。

受精卵(胚)はとても小さいので、顕微鏡を使って拡大しないと見えません。

そのため、顕微授精はもちろん、日々の発育状態やグレードなどの評価は必ず「顕微鏡」を使用する必要があります。

しかし、前述の通り、受精卵はインキュベーターの中に入れておかなければいけません。

つまり、観察するためには胚をインキュベーターから一度取り出して、同じ部屋においてある顕微鏡まで運んで観察しなければいけませんでした。

採卵から1日目〜6日目まで培養しますが、多い施設では毎日観察を行い、その度に胚は外気に曝される事になります。

そこで開発されたのがタイムラプスインキュベーターです。

タイムラプスインキュベーターとは?

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