見出し画像

【3】社会人 「法律家の道を諦めて就職する道を選ぶ」

 箸にも棒にも掛からなかった司法試験を経て、法律家の道を諦め就職する道を選んだ。裁判傍聴に出入りする中で、自分は弁護士として事実を解釈して人を救うことよりも、裁判に立つ人の人生や背景に思いが向かうことに気づいたからだった。

「何があの人をそうさせたのだろう、そうせざるを得なかったのだろう?」そういう人の心理・行動を動かしている社会の仕組みを知りたい、そこで生まれる葛藤や人間関係を解決できる人間になりたい、そう思って社会人になった。

 入社したのは、企業内の人や組織の問題解決を支援する会社。就職活動時代に聞いた話、内定者時代にみた、ホワイトボードを前に「人や職場について真剣に語り合う」風景。これまで満たされなかった、人や組織、社会に対してまじめに向き合うことができる、そんな期待が膨らんだ。

入社後、新卒採用や若手育成の支援をする部署にコンサルタントとして配属される。そこでは、事前の期待を越えるような機会に恵まれた。しかし、一朝一夕には成果がでない仕事。長い間燻ることになる。まったく仕事ができないわけではないが、給料見合いの貢献ができているとは到底思えない日々が続いた。

その理由は一言で言うなら「本来不器用なのに器用にこなそうとしたから」。優秀な先輩の資料の上っ面を真似て、顧客や協働者から楽に及第点をもらおうとしていたのだ。失敗したら居場所を失うと思っていたから。周りも優秀で、そして弱音が見えない人たちと比較して無能感が募り、焦っていた。焦りが余計に自分を燻らせているとも知らずに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?