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市民サークルにも合理的配慮が求められている

「尹東柱の詩を読む会」という文学サークルを主宰している。
30年近く会を重ねてきたせいか、いろいろな人が参加するようになった。
 
視覚に障がいのある人、車椅子の人、聞こえづらい人…あえて区別はしたくないが、いわゆるマイノリティの人たち。
だから詩を読む会も、少しずつ変わろうとしている。
みんなが集えるように。
 
机の前に名札を置くことにした。
一人一人の名前が分かるので、初めて参加した人にもいい。
聞こえづらい人も視覚で分かる。
手を上げて大きな声でゆっくりと発言すれば、目が見えない人は誰が発言しているか分かるし、聞こえづらい人も聞き取りやすい。
 
みんなに提案したら、その都度、臨機応変に対応していきましょうという返事。
 
手を握れば
みんな、穏やかな人びと
みんな、穏やかな人びと 
(尹東柱の詩「看板のない街」より)
 
 
話は変わるが、視覚に障がいのある人を何度かサポートして気付いたことがある。
 
例えば、点字ブロックは、必ずしもまっすぐに敷かれていない(道路の状況によって左右にずれたりしている)。
バスの中では、エンジン音で車内のアナウンスが聞こえにくいことがある。
歩道橋のらせん状階段を下りるのが不安だったり、初めて行く場所では迷子になったりすることもある、と話してくれた人もいた。
 
今年4月から、障がいのある人に合理的配慮を提供することが事業者に求められている。
もし何らかの合理的配慮を求められ、その対応が難しかったとしても、事業者は障がいのある人と話し合って、自分たちができる範囲で何か別の方法はないかを考えなければならない。
 
合理的配慮とは、▽利用しにくい施設・設備・制度▽障がい者の存在を意識していない慣習や文化▽障がい者の偏見―など、障がいのある人が日常生活を送る上で障壁となるものを取り除いていくことである。
 
具体的には、▽車椅子のまま着席できるスペースを確保する▽筆談で伝える▽売り場まで白杖の人を案内する―などだ。
 
今回の詩を読む会のケースが、まさにそうだった。
初めて会に参加した人から、体の状態のこともあり、次回の参加に自信がないというメールが届いた。
 
なぜ、あの時すぐに配慮が必要だったことを気付かなかったのだろうと悔やまれた。
そこで、私たちにできることを考え、仲間に事情を話し、会でも対応していこうとなった。
 
全ては相手の立場を想像すること、相手の気持ちになって考えることから始まる、と実感した出来事だった。
 
合理的配慮の提供は、企業や店舗に求められるものではある。
しかし、考えてみれば、市民サークルも一つの事業者。みんなで気持ちよく生きていきたい。
私たち一人一人にその姿勢が求められていることを思う。

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