コシャーさんの箱

今日は本当にいい一日だった。
なぜなら偶然、都内の無印良品にてこれに再会できたから。

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厚紙でできた、ファイルボックスのような箱。
フランスではこの類の箱に、公文書などが保管されている。
紐が二か所についていて、上部の蝶結びをしている紐が蓋留め。
下部の輪になっている紐は、隙間なくストックされた箱を取り出すためのもの。
公文書館などの書庫では、この箱が棚にぎっしりと詰め込まれている。
そんな時、輪になった紐を引っ張れば、1箱だけ容易に引き出すことができる。

私も以前フランスで資料収集をしたことがあり、何度かこの類の箱にお世話になった。
過去の文書は手紙のような紙1枚で残っていることも多くて、そういうものが、何枚もこの箱に詰まっている。
だからスタッフから箱をもらって閲覧席に向かい、蝶結びを解いて蓋を開ける時、タイムスリップをするような、わくわくする心地だったことをよく覚えている。

そんな箱に、まさか日本でお目にかかれるなんて!
しかも売っている!!お値段1800円!?
これは買うしかない!!

こうしてすっかりテンションが上がった私は、使い道なぞ一切考えないまま、一箱抱えてレジへ。
ファイルボックスにしてもいいし、レターセットを入れてもいいし、まぁ用途は何かしらあるでしょう、と思っていた。

帰宅して袋を開けると、一枚の紙が同封されていた。
手に取った記憶がないので、知らぬ間に店員さんが入れてくれたらしい。

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「コシャーさんの箱」。
書類箱とか文書箱のような素っ気ない名前だと思っていたが、人名が付くと妙に愛着が出てしまう。
ネットでググってみると、無印では「コシャー箱」とも言うらしい。
私が買ったのもまさにこれ。
商品説明もこの紙と一致する。

…ということは、フランス語でも「コシャー箱」とか「コシャーの箱」と呼ぶのだろうか?

つい気になった私は、フランス語で「箱 コシャー」とググってみた。
すると、すぐにそれらしきページがヒットした。
確かにトップページにも、「コシャー箱 Boîtes Cauchard」とフランス語で書いてある。
(下記リンクの最初の”Fabicant”はスペルミスで、Fabricantでしょう)

いわく、このコシャーという会社は、ミシェル・コシャーという人によって1948年に開業したという。
無印の商品説明にある「コシャーさんのお父さん」というのが、このミシェルさんだろう。
会社ではこの文書箱をメインに作っているらしく、商品一覧にも似たような箱がいくつか載っている。
基本的には官公庁向けなのだろうか、「見積請求 Demandez un devis」ボタンだけで、ECショップのような購入ボタンはない。

・・・ということは、フランス語でも「コシャー箱 Boîtes Cauchard」と呼ぶのが一般的?
そう思ってさらにググったところ、やはりいくつかのネット記事で"Boîtes Cauchard"という言葉がヒットした。
例えば以下。

"Les archivistes ont pris l'habitude de les appeler "les Cauchard". Ces boîtes d'archives, fabriquées en Ardèche à l'aide d'un carton spécifique et normé [...]"
(文書館員はそれを「コシャー〔の箱〕」と呼ぶ習慣がついた。この文書用の箱は、アルデシュ〔※地名〕で特殊なボール紙を使って生産されており、〔…〕)

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ただ記憶に残っている箱を衝動買いしただけの話だったのに、無印の店員さんが商品説明を入れてくれたおかげで、すっかり箱のルーツまで調べる羽目になった、というお話。
自分の記憶もそうだけれど、こういう物語があるとただの箱じゃなくなるから不思議。
さて、何を入れて使おう。


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