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メキシコと壁画の関係

メキシコの町には壁画文化が浸透している。

 メキシコと聞くと、陽気な人々や、色鮮やかな街並みを思い浮かべる人が多いかもしれません。その中でも、メキシコの街を彩る大切な要素が壁画です。実は、メキシコの壁画文化は歴史と密接に関連しており、長い時間をかけてさまざまな変化を経験してきました。
 そこで今回は、メキシコの壁画が一体どんな歴史を辿ってきたのかを紹介したいと思います。

【先住民文化と伝統】

メキシコには古代からの先住民文化の豊かな伝統があります。アステカ文明やマヤ文明の時代から、壁画やフレスコ画が重要な手段として存在していました。その当時、壁画は儀式や歴史、神話を表現するために用いられており、この伝統が現代にも影響を与えています。

【スペイン植民地時代(16世紀~19世紀)】

スペインの征服後、メキシコは植民地時代に突入します。この時代にはキリスト教の教義を広めるため、教会や修道院の内部に宗教的なテーマを描いた壁画が登場しました。

【メキシコ独立運動とポルフィリオ時代(19世紀末から20世紀)】

821年の独立後、メキシコは政治的混乱と独裁政権を経験します。これを経て1910年、社会的不平等や抑圧に対する反発を背景にした大規模な社会変革運動であるメキシコ革命が勃発しました。革命後の政府は、新しいメキシコのアイデンティティを築くために、アートや文化を重要な手段と位置付けました。

【メキシコ壁画運動の興り(1910年以降)】

そこで、ディエゴ・リベラ、ホセ・クレメンテ・オロスコ、ダビッド・アルファロ・シケイロスといったアーティストが壁画運動の中心となって、リアリズムをテーマにした壁画を描き始めました。これをメキシコ壁画運動と呼びます。この運動では、労働者、農民、先住民などの抑圧された人々の歴史や苦悩、希望を扱った壁画が盛んに描かれました。壁画運動が発展した背景には様々な理由がありますが、そのひとつとして、大衆にアクセスしやすく、考えや社会へのメッセージを伝える手段として理想的な手段だったことが挙げられます。そして1930年代から1940年代にはメキシコ壁画運動の国際的な認知度の向上に伴ってディエゴらの作品が高く評価されるようになり、メキシコの文化的シンボルとしての壁画が確立されました。

【1950年代以降から現代】

壁画は公共の場に描かれることが多いため、どんな人でも簡単に楽しめます。美術館やギャラリーとは異なり、大衆文化の一部として日常で自然に触れることができる芸術です。現代でもメキシコの文化の一部として存続し、都市の公共空間や建物に描かれています。現代のアーティストも伝統を受け継ぎつつ、新しいスタイルや技法を取り入れた壁画を制作しています。


これらの歴史的出来事により、メキシコでは壁画が豊かな文化遺産として根付き、今も大切にされています。


【メキシコ三大壁画家】
・ディエゴ・リベラ
ディエゴ・リベラの作品は社会主義をテーマとし、労働者階級やメキシコの歴史・革命の描写によって、社会的・政治的メッセージを発信しています。また彼は、メキシコ革命 (1910-1917) 後の社会変革がきっかけで起こった「メキシコ壁画運動」の中心人物でもあります。この運動でディエゴは公共の場に大規模な壁画を描き、メキシコの歴史や文化、社会的課題を広く伝えようとしていました。

・ダビッド・アルファロ・シケイロス
ダビッド・アルファロ・シケイロスは、時代を反映した作風が特徴です。ディエゴと同様、メキシコ壁画運動に関わって おり、社会主義リアリズムに基づいた写実的で劇的な スタイルを追求しました。労働者階級や社会正義を描き、革新的技術を用いたダイナミックで迫力ある構図が際立ちます。

ポルフィリオ時代から革命へ
Del porfirismo a la Revolución
自画像
Self-Portrait, 1945
UNAMの壁画

・ホセ・クレメンテ・オロスコ
ホセ・クレメンテ・オロスコの作品はメッセージ性が強く、暗い色調と力強い筆致で感情や緊張感を強調した表現が特徴です。彼もディエゴやシケイロスと共にメキシコ壁画運動の主要なアーティストとして活躍しました。彼の作品はメキシコの歴史や文化を深く反映しており、古代メキシコの神話や市民の姿を題材にした作品も多く見られます。

立ち上がる僧侶イダルゴ
Hidalgo incendiario


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