【短編】カラーコード
アザレアピンクの空を
泳いでいるカモメがいた。
羽ばたきも忘れて
何故空を自由に舞えるのだろうか
空と海の境界が
曖昧になった夕刻に
おろしたてのブーツぶら下げて
ひとりで走った砂浜を
誰がみているのだろうか
誰かみていたのだろうか
少しだけ、世界を
少しだけ、深く知ってしまって
永遠の距離の少しだけでのせいで
人と同じ速度で歩けなくなって
この命、くれてやるよって
伝えて笑って流れてく
インディゴブルーの海を
泳いでいる私がいた。
息継ぎを教えてよ
あぶくはまるで星空のようだ
生と死の境界に
恐れを無くした夜は
たった2パーセントの指先すら
空気に触れることも叶わずで
誰がみえてるのだろうか
誰かみえてるのだろうか
中途半端な優しさを
毛嫌いして、跳ね除けて
たった1人になった夜に
残った体温に縋りついて
もう平気だよと見上げた空に
マリーゴールドが咲いていた。
fin
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