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アジトでサバイバル?山口雄人合唱わくわくワークショップ

先日、ハンガリーのコダーイ音楽教育研究所で学ばれている山口雄人さんが主催する合唱ワークショップに参加しました。7月後半から日本全国でワークショップをされているのですが、その評判を聞いていたので、とても楽しみにしていました。

前半は個人練習・合唱団で行う練習と楽曲分析でした。
まずウォーミングアップをしたのですが、合唱団のウォーミングアップは、耳を開いてゆく作業なのだと思いました。たった1音だけのユニゾンでも感覚を研ぎ澄まして、隣の人の声、全体の声に合わせてゆくと、自分の声は出しているのに、自分の声が聞こえなくなる。そして、曲の中でユニゾンになるときには、お互いに「迎えいれる」感覚を持つのが重要とのこと。

ドとソが鳴っているところに「ミ」を入れると、「ハモりたい」と頭の中でものすごく調整しているのがわかりますし、3グループに分かれてのカノンではユニゾンになるグループもあれば、どこともユニゾンにならないグループもあってかなり混乱しますが、合唱団でこそできる練習方法でした。

楽曲分析は藤嶋美穂さんに委嘱した新作の4声部の合唱曲でした。個人でできることとしては、まず音をつけずに歌詞を読む。シンプルな詩でも、「え、そういう意味だったの?」と思うことがたくさんあるのです。なので、まずは歌詞の解釈が必要になります。それをふまえて、フレーズの位置、練習番号をどうつけるかを検討し、再度詩を読んで、どうイントネーションをつけるか等を決めてゆきます。そして、音取りをして、間違えやすいところ、大事な和声では指導者は正解を示す必要があります。

この曲は本当に美しくていい曲でした。アルトに臨時記号が割とついているのですが、「臨時記号は作曲家が愛した音」という山口さんの説明に、ますますこの曲が好きになりました。

後半は合唱指揮法でした。誰もが良く知る日本の唱歌を使っての指揮だったのですが、本当に大変でした。無伴奏、2拍目から入る、2拍子を振る、という経験が全くなかったので(今まで伴奏付きで4拍子、3拍子しか振ったことがなかった)、振り方も出だしの合図の仕方も教えてもらったのですが、その場ですぐに反応できない。山口さんがやることを真似すればよいだけなのに、できない。歌っている人のほうがどう動いたらよいかわかっているのに、私だけが動けない。汗が吹き出し、滝のように流れ落ちる・・・。家に帰って2日間くらい鏡の前で試してみて、やっと腑に落ちたのですが、合唱団の息をそろえる作業がこんなに難しいとは・・・。
 
「さくらさくら」を使って、手を動かさずに指揮をする、ということもやりました。自分が歌詞をどう解釈して、どう歌ってほしいかを顔だけで伝えるのですが、合唱団のみなさんが私をしっかり見て理解しようとしてくださって本当にありがたかったです。「茶摘み」も私のつたない指揮にもかかわらず、真剣に歌ってくださいました。感謝の気持ちでいっぱいです。

指揮は、最初に歌詞を読むところから始まるのかもしれない。そして、目を見てコミュニケーション。もっとたくさんの指揮の経験を積んで、言葉を伝え、気持ちを伝える演奏がしたいです。そして、いつか、前半にやった藤嶋美穂さんの曲を指揮したいです。

今回の会場はちょっと変わったところでした。会場に入るなり山口さんに「合唱わくわくワークショップへようこそ!」と声を掛けられ、「アジトみたいですね」「サバイバルやってるみたいですね」「こういうところで皆でなんとかしようと頑張るところから変な宗教が生まれるかもしれないですね。歌がうまくなる壺とか売っちゃおうかしら?」などなど、楽しい会話が生まれるアドベンチャーワールドでした。忘れられない思い出になりました!

テントもありました!