日記



今は消してしまったマッチングアプリで出逢った大学の後輩の男の子(こちらの脈無し)から懲りずに会おうと誘われる。その誘い方の言い回しが面白くてつい私も同じように面白い断り方で返事を返してしまうのだけど、このままだと永遠に誘われ続けそうなので早めに電話をかけ、あんたは私に下心あるけん二人で会うのは無理、と教える。その代わり今は暇だから電話してやる。と話している内に実は私の展示を見に来たことがあって、在廊していたので昔会ったことがあったということが今になってやっとお互い分かった。授業で私のzineなども先生が生徒に見せていたらしい。さっきまで馴れ馴れしくでかい声で調子が良いことをベラベラ喋っていたくせに、突然かしこまり「…作品良かったのですごく覚えてます」と小さな声で静かに伝えてくれた。純粋に嬉しかったのだけど、その後「これ先に知ってたら絶対まともに喋れなかった…」と独り言のようなことを呟き、ため息しかつかなくなって何故か黙り込んでしまった。私は突然どうしていいか分からなくなりちょけていると、しばらくして「俺のことクソガキがなんか喋ってると思いながら聞いていたんでしょう」と吐き捨てられた。

まるで身に覚えがないことで他人を騙して脅していたように責められた気分になって、私は少し動揺した。
だけど本当はその日の夕方、3年間撮ってきたセルフヌードを今年完成させて展示することを決めた時、久しぶりに「全員殺す。」という感情をふつふつと湧き上がらせながら家のキッチンの片隅で一人煙草を吸っていた人が、紛れもなくあの時もこの時も同じことを思って作品を創ってきた自分自身であったことを思せないはずなどなかった。


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