水について

一昨年くらいに撮った写真
灰が瓶に詰まった様子を撮った写真
その写真を見るたびハッとして
思い出せることがあるから
好きな写真
でもどの作品にも使えない特別な写真

初めてコンドームに入った精子を見た時に
あんなにたくさん身体と精神を使っても
こんなに小さい一掬いだけで
それでも暖かく光って生きてるみたいに見えて
だけど空気に触れたからもう死んでいて
それでも私はこんなに小さな所から
生まれてきたのかと思うと
不思議で美しくて感動したのを
思い出せる写真

もちろん何も言わずにしばらく手に取った後
冷えてきた後はそっとゴミ箱に捨てた

(大袈裟に感動することに罪は全く無くても大抵は口にしてしまうと野暮なことばかりで
写真は言葉にできなかったことを写せる)

それでもエロと性が違うってことを
どれくらいの人が区別できてるかなって思う、

誰とでも共有したい話ではない
あなたとだから共有してみたい話がある
そうして落ち着いて静かに自分の身体のことを
お互いが話せた時間って限られた人中で更に限られた人しか居なかったな

写真の面白さは
撮った時よりも、撮ったのを見た後に
別のことを思い出してハッとしたりすることだし
とても大切にしてる写真だけど
それは私にしか分からないことだから
やっぱりどの作品にもきっと使えない

初めて、を永遠に記録できる写真が好きだ

そういえば初めて飛行機に乗って間近で雲を見た時
今まで見てきたたくさんのイメージよりも
一番美しくて泣いてしまった

そんな風に感動するなんて思わなかったから
自分でもびっくりした
いつも本物の感動は想定外の時に現れる

写真に撮っても残せそうにはないと思ったから
撮れなかった、というより撮らなかった

最初に書いた話の時の私もそうだった
写真に残せないなって瞬間
私は途方にくれて叶わないなと諦めてしまうけけれど
どれだけ世界が美しいことに私が敗れて
どれだけそのことに対して私は救われてきたかな

そう言いながら撮らずにはいられないのは
私はとても忘れっぽくて鈍感で欲深いからなのかな

昔の話を思い出す
まだ写真も知らなくて今よりも
初めて生きることに戸惑う私に
見かねた父がいつか言った
「濁りやすいのは透き通った水だからだよ、」
という言葉

たくさんの人がなんとか各々の方法で
自分の水の純度を保っているのだとしたら
私にとってその方法が写真をすることなのかもしれない

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