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【雑記】建国記念日と「秋入学」・「英語公用語化」

 皆さん、こんにちは。えむ@非常勤講師&大学受験アドバイザーです。

 今日は2月11日、建国記念の日です。

 神武天皇が御即位されたのが旧暦での紀元前660年1月1日。この日が明治以降の新暦で2月11日となったとのこと。我が国の始まりということで、まさに祝日ですね。明日はその振替休日ということで、3連休の方も多いのではないでしょうか。

 さて、今日の雑記は少々トゲトゲしいかも…。というのは、先日のこのニュースにモヤモヤしてしまったからです。

 コメント欄を見るまでもなく、賛否両論のこの話。いろんな意見があることは百も承知ですが、私は「秋入学」も「英語公用語化」も、反対です。というか、いったん「否」との結論が出た話だったのに、この人まだあきらめていなかったのですね…。

 新型コロナウィルスがはやり始め、多くの学校が休校を余儀なくされた2020年春、「秋入学」の話がこの吉村知事やら小池都知事やらから出されました。いわゆる「ショック・ドクトリン」だとして大きな批判を集めました。

 ショック・ドクトリンとは、「社会に壊滅的な惨事が発生した直後、人々が茫然自失している時をチャンスととらえ巧妙に利用する政策手法」をいいます(ナオミ・クライン著『ショック・ドクトリンー惨事便乗型資本主義の正体を暴く』は非常に面白いです!)。

 混乱に乗じて、人々の同意なく、社会を、それまで慣れ親しんできたやり方を根底からひっくり返してしまうのは、実に卑怯な政治手法です。

 この時(2020年5月)は、約3000人の研究者からなる日本教育学会が「時間をかけた丁寧な社会的論議が必要であると考え、政府に対して拙速な導入を決定しないよう求める」との声明を発表し、秋入学導入を批判しました。

 この記事の中で、当時の広田照幸会長は「はっきり言って、教育の制度も実態もあまりご存じない方がメリットだけを注目して議論されている」と痛烈に批判しています。

 まったくその通り。教育業界の末端にいる私でさえも、この混乱に乗じて何たる暴挙か!と怒りに震えたものでした。

 では今回、なぜ再びこれを言いだしたのでしょうか。最初の記事で、吉村知事は「日本全体が国際化目指していかなきゃ、もう、どんどん衰退していくと僕は思っています。実際衰退しています。世界は成長していますから」と述べています。

 吉村氏のいう国際化とは「秋入学」なんですね(笑)。ずいぶん幼稚で底の浅い考えだなぁと思います。日本の衰退は「国際化を目指していないから」ではありません(というか、この人、「国際化」の意味をよく分かっていないらしい)。

 誤解を恐れずに言えば、日本の衰退は、ここ30年ずーーーーっとバカの一つ覚えのように続けてきた、「改革」のせいだと思います。つまり、日本の良いところを「時代遅れ」だの「ガラパゴス」だのと蔑み切り捨てて、「グローバル化」に無理やり突き進んだことが原因でしょう。

 「大学改革」、「金融改革」、「行政改革」、「民営化」等々…。世界基準だ、グローバル化だと叫んで推し進めたこれら、どれか一つでも成功したものがあったでしょうか?

 そもそも公立大学「一校」で実施して、何の意味があるというのでしょうか…。

 そして、「大学の英語公用語化」。母語でありとあらゆる高等教育が受けられるという最高の教育環境をかなぐり捨てて、すべて外国語である「英語」で学問を行おうということなのですから、これもまた愚の骨頂と言わざるを得ません。あまりにも「言語」とそれを取り囲む文化を軽んじすぎです。

 母語で高等教育が受けられること、あらゆる領域の思考・実践を母語でできることが、どれだけ国民一人一人にとっての豊かさを最大限に広げることか。

 何度でも言いたい。

 外国語の習得は豊かな母語の土壌の上に成り立つもので、母語以上に外国語が流暢に、そして縦横無尽に扱えるようになることはありません。

 しかも、日本語を母語とする私たち日本人が英語をとりあえず習得できたとしても、それは「外国語」の域をでないわけで、英語を母語とする人々とはやはり「差」が生じるわけです。

 仮に英語化が進んだとして、この差は英語圏・非英語圏だけで生じるのだけでなく、国内でも生じることになるでしょう。つまり、英語を喋れる者とそうでない者との差です。そうなると、日本社会の中に新たな分断ができるのは容易に想像できます。

 この辺りは、以前noteの書評でとりあげた、施光恒氏の『英語化は愚民化』にも詳しいです。

 私たちは、高度な知を構築できる豊かな母語と、2600年に及ぶ長い歴史と伝統を有しています。私たちは私たちの在り方、慣れ親しんできたやり方をもっと大事にし、それらに自信を持つべきだと思うのです。

 …そんなことを考えた建国記念の日でした。

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