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ぼくらが旅に出る理由/わたしが旅に出ない理由 (旅をしないわたしが旅のマガジンで書き始めるまで)


旅に出るということが、日常に溶け込んでいる人がいる。



お休みのたびに海外や国内のいろいろなところに行って、その土地の話をしてくれる彼らの話を聞くのはとても楽しい。

ただ、「あなたも旅に出ればいいじゃない」と言われるたびによぎる気持ちは、そんなに頻繁に旅に出たいわけじゃないってこと。ごくごくたまにでいい。

わたしには旅に出ない理由がある?

もしそれが本当なのだとしたら、いったいどんな理由なのだろう?

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この記事は、旅とサッカーを彩るweb雑誌OWL magazineのコンテンツです。この記事について本文部分は無料で読めますが、有料のおまけ部分が文末にあります。単体で購読することも出来ますが、月額700円で15〜20記事が読み放題となるのでそちらの方がお得になっています。


はじめまして。屋下えまです。

都内の大学で教員をしながらのんびり暮らしています。
サイゼリヤと不動産情報が大好きです。


さておき。

主筆のハト氏にOWLの立ち上げを手伝って欲しいと言われた時、サッカー(スポーツ)と旅の組み合わせだという話を聞いて、わかるようなわからないような気分になりました。というのも、スポーツを見に何処かに行くことが旅だなんて思ったことがなくて。宿泊を伴うものであろうがなかろうが、それはちょっとした「遠征」や「おでかけ」だと思っていたのです。

「人生とは旅であり、旅とは人生である」と中田英寿も言っているし、旅はものすごく高尚なもので、結構努力が必要で難しいものなんじゃないか、というか、そうあるべきだと思っているところがありました。

だって、人生がそんなに簡単で手軽だったら、つまらないじゃない?
すぐにできるものはすぐに飽きちゃう。小さい頃からずっとそうでした。

だから、旅を難しいとかややこしいとか、めんどくさいとか、そういうものとして位置づけたい。それが楽しさや幸福感を最大値に引き上げることを知っているから。たぶんそのあたりが、わたしが旅についてのハードルをあげる理由の基本線なんだと思います。


では、わたしにとっての旅ってどのようなものなのでしょうか。いくつかの要素に分けて考えてみました。


旅の要素1:準備にかける手間暇は大正義!

わたしはとにかく交通に関する文字情報が大好きで、どこかにいくのであればできる限りの情報を集めたいのです。


思えば子供の頃から時刻表が好きでした。よく立ち寄る駅や空港では必ず時刻表をもらい、家にコレクションして、お出かけの際には必ず完璧な乗り継ぎを目指していました。もちろん冊子体の時刻表も愛読していて、どこからどこまで何キロで、新幹線に乗るのであればどの車両だとどのサービス(当時は食堂車とかがあったんです)があって、どんな駅弁があるのかなどを調べに調べて、脳内でもたくさんの旅をしていました。いまはジョルダンやyahooの乗換案内があるからわたしのコレクション癖もおさまりましたが、行ったことのない土地へのルート設定は大好物です。


旅に出た土地で何を食べたいかやどんなところに泊まりたいかについても、調べることそのものが楽しくてありとあらゆる手を尽くして調べます。

もちろん時間や金銭的な制約はいつもあるから、全て思い通りに行くわけではありません。このホテルの朝食は地場のものを使っていておいしそうだけど、ちょっと部屋が狭そうだとか。温泉があると良いけど、お部屋のバスタブが広そうだから嬉しいなとか。バスタオルふかふかそうだなとか。いろいろありますが、それらをすべて鑑みた上で、今回はここって決めることにしています。

ただ、電車にしても飛行機にしても遅延や運休などのトラブルはつきものです。たまたま行き先に選んだところがお休みだったり、思ったようなものではなかったり。

そういうときこそ頭に入れた情報を駆使します。ベターな軌道修正が出来ると、ぐっと楽しさが増すのです。

とにかく綿密な計画を立てる。
だがしかし思いどおりにいかない。それがいい。



旅の要素2:行き先は何があっても自分で選びたい!


仕事柄、毎年研究室の学生さんと一緒にどこかに行きます。ゼミ旅行みたいなものですね。でもこれは、学生さんの自主性や行動力を培うためのものでもあるので、どこに行きたいとか何をしたいとか、ほとんど言わないことにしています。こうなってくると旅行という名前こそついていますが、わたしのなかでは旅ではないのです。


じゃあ、行きたいところってどこだろうっていうと意外と頭に浮かびません。長い期間職場をあけられないこともあるし、日本中あちこちに仕事で行くことが多いため、ここに行きたいという場所がなかなか見つからなかったりします。


やっぱり旅は行きたいところにいかなくちゃ!


旅の要素3:何度も行く場所、もうそこは「home」!

不思議な縁のある土地があります。部活の大会の帯同で行ったり、好きなチームの応援にいったり、なぜか仕事でちょくちょく行くことになったりなど。そうなってくると、なぜかもうそこは旅の目的地ではなくなって、帰る感じになっていくのです。何泊もして、ちょっと珍しい交通機関を使って街を探索したり、お城の周りをジョギングしたり、坂ダッシュしたり(近年はやっていません)、お気にいりになったスーパーマーケットやカフェに通ったり。そうなったらそこはもうhomeです。

homeに戻るのは旅じゃない!


旅の要素4:ちょっとでも仕事がからんだら出張。自腹でもね。

これは宇都宮さん、円子さんの文章読んでくださいね。何をどう考えてもわたしが書くより素晴らしいので!
(わたしは二人のものすごいファンなのです!!! 宇都宮さんはずっと前から、円子さんはOWLからですが、いつもおまけ部分はめちゃくちゃおいしい鮭の皮のカリカリ部分食べるときみたいな幸せ感があります!)

宇都宮徹壱

旅✕フットボールは不確定の2乗である~旅に「無駄」が許されていた頃の思い出~

円子文佳

サッカー観戦が「業務」になっている人に~旅と出張はどう違うのか~ 2019アウェイ新潟 

仕事絡みの自腹とは…だいたい学生の試合の手伝いやら応援やらなんですが、これは交通費宿泊費以上に学生のお財布としての役割をこっそり期待されておりいろいろ大変ですが、一回り下の若い子たちのリアルな話が聞ける貴重な機会なので必要経費なのですよ。たぶん。

出張もまた楽しい!


旅の要素5:旅要素が濃いのは遠いところ

結局のところ、わたしは駅とか空港が大好きなのです。特に大きな駅と空港。

大きな駅や空港に行くと、わたしだけではなく周りの人も、日常とは違うワクワク感に包まれていることが多いです。もちろん出張の人もたくさんいるけれど、夜の新幹線なんてパソコンカタカタしている割にビール飲んじゃって、ちょっと楽しそうな人がいて、そんな雰囲気に包まれるのはこのうえなくよいのです。
そして何時間も電車や飛行機に乗ると、それだけで非日常感が味わえるので、やっぱり距離があるほうが旅にふさわしい気がします。

あと有料特急とか飛行機はビールが飲めるし、トイレ付いているのがいい!大事なことだからもう一度いいますがトイレ付いているのがいい! 


おなかよわいんです。

旅の要素6:「いつもそこにあるもの」が目的なら旅!

これはわたし独特の感覚かもしれませんが、スポーツ観戦やイベントのために遠くに行くは遠征であって、旅であるという感覚がありません。ライブとかスポーツ観戦とか、海外での結婚式への参列とか、そういうのは楽しみにしているイベントへの参加であって、わたしの完璧な旅とはちょっと違うのです。常設的な(つまりその土地にずっとあるもの)を見に行く目的こそが旅だな、と考えています。

土地にがっしり根付いたものを感じるのがわたしにとっての旅なのです。




このように、よくわからない制約というか無駄に高いハードルの上にあるのがわたしにとっての旅なのです。
それ以外はまとめておでかけと呼んでます。おでかけも好き。だからこのすべてのハードルを超えないようなおでかけはしょっちゅう行きたいし、行っている気がします。

旅を旅と呼ぶためのハードルが高すぎるのが、わたしが旅に出ない理由のひとつなのは間違いありません。でもたぶんそれだけではないという仮説をもとに、少しだけ自分を紐解いてみようと思います。

わたしは、どこ出身って聞かれるたびに戸惑うような転勤族の子として生を受け、大学進学を期に西の方から上京しました。流され流され関東をあちこち移動し、定住することのない人生の真っ只中です。

生まれのせいなのか何故なのか、とにかくわたしは知らないどこかに出かけるよりは知らないどこかに住みたいという気持ちが強いのです。
これまでに住んだ住居は5都道府県、14軒! 自分で決めた引っ越しは10回。


旅ってなんだろうと考えたときに、絵的なイメージだと

「日常から完全に離れた非日常にぽーーーーーーんって飛ぶ」

これだけが目に浮かびます。

でも隔離された非日常よりも、日常生活の中にあるかもしくは延長線上にある「ここではないどこか」との関わりこそがわたしの求めるものなのです。完全に離れたところじゃなくて、延長線上。日常生活の延長線上にひそむ非日常のほうが、ちょっとエロくて素敵だと思っています。

ポーンと離れた非日常だと、わたしがわたしじゃなくてもわからない。
周りの人の目線がなくなると、わたしはどこかわたしじゃなくなりがちなのです。それこそ旅の恥はかき捨てじゃないけれど、いつもと振る舞いを変えてしまったり、ちょっと背伸びをしてみたり、かっこつけてみたり、悪ぶってみたり。
もちろんそれが素敵な思い出に繋がることもあります。


でも、いまここにいるわたしがそのままで何を感じるか。


そのほうが土地が体に染みるのです。
だから遠方にいくとしても、長期間コンドミニアムなどに滞在して、その辺をぶらぶらしたり、スーパーで買い物して自炊したりして過ごしたいのです。


そしてもう一つ理由があるとすれば、それはわたしの職業からくるものかもしれません。

先生という仕事は、いつも学生を見送らねばならないのです。旅館のおかみさんみたい。何年も叱咤激励してもう大丈夫と思って送り出した学生たちは今、みんな立派に自分の人生を生きています。


わたしがこの仕事をしていて大事にしていることは一つだけ。面倒を見た学生全員が、自分の人生を自分で決めて舵取りができるようにして卒業させるということです。もちろん少し心配しながら送り出すこともあるけれど、みんな社会に出ていくとびっくりするくらいの成長を見せてくれます。

彼らが帰ってきて、自分の旅を話してくれることはほんとうに素晴らしい。
もちろんしんどくなって帰ってきた子のお尻を蹴飛ばすも多々ありますが、ちょっと励まして次の新しい旅に向かっていく姿を見ることは、わたし自身が旅に出ること以上の喜びです。


だから、彼らが帰ってくる場所でありたい。彼らがここで頑張って、楽しかった日々を覚えていられる人でありたい。
わたしの日常は、彼らの良き思い出の場所でもあるわけだから。

小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」でも、「ぼく」が旅に出るわけではなく、ここにいて遠くに行く恋人を思うわけです。


わたしはそっち側の人。いつでも待ってるよ。
なんてね。


とりとめもなくなりましたが、旅とスポーツに関しての思いを綴るこのOWL magazineのなかで、旅をしないわたしは他のみなさんと少し違ったおはなしを書いていきたいと思います。旅と日常のあいだくらいのところが一番好きなので、旅というモチーフと日常の境目あたりのお話を書いていく予定です。たまにスポーツも。

わたしはここにいて、そして旅をする。

旅を日常に溶け込ませる旅人と、
旅と日常を遠くに離して、日常を広げていくわたし


全然違うように見えるけれど、日常そのものを愛しているというということにかわりはないのかもしれません。


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ここからはおまけですが、おそらく一部の人にはとても役立つ情報になるのではと思い、シェアしたいと思います。完全に趣味ゾーンです。不動産のおはなし。

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