こたつのなかの大冒険 ~時刻表旅行のススメ~
そういえば、文字が読めるようになったのはいつだっけ?
令和のこどもたちは幼稚園や保育園のときから文字が書けたり、読めたりするみたいだけど、実際私がいつひらがな、カタカナ、漢字、そして数字を自由に読んだり書いたり理解したりするようになったのかなんて、全然覚えていません。
でも物心ついてからずっと、文字を追うのが大好きでした。
活字中毒という不治の病に罹患した小学生は、新しい学年の教科書をもらったらその日のうちに片っ端からめくってめくって、もちろん内容が全部わかるわけじゃないけれど、こころゆくまで文字を追うことを楽しんでいました。私以外にもそんな子供時代を過ごした人はきっとたくさんいて、共感してもらえるのではと思います。
お外で遊ぶのも大好きだったけれど、本や雑誌をめくりながら過ごすのは、小さな私にとって至福の時間でした。
夏はゴザに寝転んで。冬はこたつに寝転んで。
もしかしたら手に取れる「文字が書いた紙」なら何でも良かったのかもしれません。ひたすらめくって、ながめて、読んで。
でもその中で特にお気に入りだったのが、タウンページや時刻表でした。
そしてその嗜好は今も私の中に残っています。
なぜこういうものが好きなのだろうと考えて、一つの共通点が見つかりました。
それは情報だけで紙面が構成されていること。
そして膨大な情報が文字として整然と並んでいること。子どもの目から見たら、めちゃくちゃビッグデータ!
もちろんこれらの本を作った人たちの意図や気持ちは、大きな構成や欄外にまで散りばめられているはずです。
でも、ぱっと見が地味な情報の羅列でも私の頭の中を通って再構成されることで、新しいストーリーや新しい世界に変わるのです!
そして昔はできなかったけれど、今ならgoogle mapなどのウェブ上の情報を組み合わせることで、実際にちょっとした駅前探検もできるのです。
そして時刻表は優しい!
私は決して鉄道や時刻表に詳しいわけではありませんが、路線図にちゃんとその路線のページが書いてあるので、誰でも欲しい情報にたどり着くことができる仕様になっています。
というわけで
時刻表を片手に、わたしと旅に出よう!
寒い冬も何のその。究極のこたつ記事をご堪能ください。
__________________________
今日が雨降りだとします。
この雨雲を抜けて、晴れたところまで旅したいと思ったら、yahoo天気などで雨雲の位置を確認します。ピーカンの晴天だなって地域を見つけたら、心の中の青春18きっぷで旅に出よう!
旅に出るにあたり、その旅のルールを決めるとスケジューリングが捗ります。
例えば、今回はこんなルールで。
1. 目的地は1日でいけるところ。
2. すべて在来線で旅をする。
3. お昼ご飯は駅弁か駅ナカで。おいしそうなものをチョイスする。
4. 寄り道はローカル中のローカル線で!ちょろり路線(後述)の先端まで行きたいな。
◎ちょろり路線とはわたしが勝手に命名した路線の形態。鉄道に詳しい人達の知る正式名称があるんじゃないかと思って調べたのですが、ピッタリの言葉みつからず。主要路線というか長い路線の中の駅を始点にして、数駅だけ出ている路線。その路線上のほとんどの駅が、他のどの路線ともクロスすることなく独立しており、最果ての駅から電車がスイッチバックするしかないような雰囲気の路線。内蔵に例えると、大腸が主要路線で虫垂がちょろり路線ですね。
伊豆急下田駅のビーチなど、先端の駅に誰もが目指すようなスポットがある場合もあるけれど、近隣住民以外使う人は絶対にいないだろうなというような路線も多くあり、その何もない感じに萌えがあります。地元である兵庫県の阪神武庫川線(武庫川駅ー武庫川団地駅)がわたしの萌え系ちょろり路線の原型の一つ。終点の武庫川団地駅付近には誰もが目指すスポットはありませんが、私の友達の家はあります。ちょっと歩くと阪神の鳴尾浜球場がありますが、のんびりしたもんです。
旅行の話なのに脱線っぷりがひどいですが、あちこち寄り道するのもまた旅の楽しみ。今回は度々脱線しますという宣言をここにしておきます!
そして今回に限らないマイルール
5. トイレの不安がない旅程。これは実際に旅するときも気にする譲れない条件。
6. ただひたすら旅程を楽しむ旅行なので、いい具合の時間までなるべくずっと電車にゆられることを目的とする。脳内旅行は肉体疲労と無縁なのでいつでも二十歳です。
それでは旅に出てみましょう。
満を持して出てくるのが、JTBの時刻表。
本屋に行くとたくさんの種類の時刻表が置いてありますが、時刻表好きの人にはみんなそれぞれお気に入りの1冊があるのではと思います。
小さなサイズの時刻表は実際旅に連れて行くのには便利でぴったりなのですが、こたつ旅人としては情報量の多い大きい版のほうが好みです。
今回は……、路線図をひたすら眺めて……。
今年の6月に旅した先でみかけて、乗りたい気持ちに後ろ髪を引きかれつつ乗れなかった上高地線に乗るために松本に行こう!目指すは上高地線の新島々駅。
_________________________
出発地は新宿。特急あずさを横目に見ながら普通列車の旅に出ます。
本当はちょっと早めに出たかったけど、寝坊して9時過ぎに新宿というリアリティ追求型でスタートしたいと思います。
9時11分、新宿からオレンジ色の中央線快速に乗って、大月まで。もうちょっと遅い時間ならば中央特快があったけれど、ほんの少し時間のかかる快速で向かいます。
高尾に住んでいたことがあるので、八王子を抜けてからも少しばかり懐かしい場所が続きます。
西八王子、高尾。暑い夏の日でも、この辺からちょっと空気がひんやりしてくる。
相模湖、上野原、だんだん引き返せない旅の匂いがしてくる。
高尾駅北口。かわいい。
確か入って右手に電車内忘れ物コーナーがあったはず。やらかしがちな人なら知っている豆知識。
実際このあたりの駅間の長さはすごいんです。そういうのもパッと見て調べられるのが時刻表。乗車時間にしろ、距離にしろ、数字で見るとスッキリします。
高尾ー相模湖間9.5キロ。「ここほんとに東京の路線!?」(実際は東京・神奈川の県境)ってびっくりするくらいの駅間距離であることと、高尾駅を過ぎて急にしんとした山間部に入ることとで、異世界に飛び込む感がすごく強くて良いです。東京ー新宿が10.3キロだから、東京にお住まいの方は結構長いなってわかっていただけるかと思います。
逆に短くてびっくりしたのが、阪急京都線の水無瀬駅ー上牧駅の間。わずか800メートル。駅から駅が見えそうなくらいの近さなのです。(見えてた気がするのですが、ちゃんと降りたことがなかったので詳細は不明。)
祖父母の家に行くときに乗る京都線。水無瀬を出たあとに上牧に着くまで、水無瀬の駅をじっと見続けるために一番うしろの車両に乗りたかったのを覚えています。
さて大月に着きました。乗り換えです。
大月といえば、本当になにもない駅ではありませんがほとんど何もない駅です。
嘘です。本当に何もないわけではありません。昼間に降りれば。ありまくります。
ちょっと足を伸ばせば、甲斐の猿橋でラフティングもできるし、ハイキングもできるし、釣りスポットもある。何より富士山が近い!ぐぐっと迫ってくるのです富士山。
そして夢のリニアですよ!
大月駅からバスに乗ればリニア見学センターがあるのです。最高。
でもこれは、昼間に降りればの話。
高尾に住んでいる頃、酔っ払って電車に乗って(引き返す電車がない時間帯に)乗り過ごしたらどうなるんだろうと思って調べたことがありました。
相模湖駅を越して、引き返す電車がなければ、とにかく大月まで行ってしまうしかないのです。途中の駅の近くにネットカフェや夜通し飲めるチェーン系居酒屋はなかったはず。
本当になにもない駅で降りてはいけません!タクシーすらいない駅だってたくさんあります。でも夜開いているお店があまりないと、星はとてもきれいなんだろうな。
乗り過ごしに気づいたらまず居場所確認。着いた駅でびっくりしてそのまま電車降りちゃダメよ。お姉さんとの約束だよ。
でも大月まで行ってしまったところで、居酒屋とカラオケ屋と数件の小さめな宿泊施設のみ。真夜中に部屋が取れるかどうかは大博打です。他の駅よりはかなり安心ではありますが。
ただし、それも来春まで!
来夏には個人的にお世話になりまくっている東横INNができるそうです。富士山の見えるでっかい東横INN素晴らしい。
やはり富士山の近く、東京オリンピックに合わせて観光需要があるんでしょうね。
結局のところ「酔っ払いは高尾止まりにしか乗らぬ」を徹底したおかげで惨事はまぬがれましたが、いつもドキドキしてたなあと懐かしく思い出します。
本当のことを言うと職場の後輩に、「いざというときは車で迎えに来てお願いお願い」と保険になるかならないかは日頃の行い次第みたいな保険?を掛けてリスクヘッジをしていました。全くリスクヘッジになってないように見えますが、この緊張感のおかげで一度もやらかさなかったんだと思います(自慢)。これまでに何度も財布をなくすなどのたくさんのやらかしをしている実力の持ち主なので、ほんとうに偉かったと思います(自慢)。
いけないいけない。また脱線したので本線に戻ります。
次は中央本線で小渕沢まで。乗り継ぎに30分ほど時間があるので、河口湖に行く富士急の改札方面を覗きに行ったり、お弁当を探したりしてみます。
時刻表の欄外にはお弁当欄もあって、各駅のお弁当が紹介されています。
今でこそみんな知っている、ひもをひっぱったら温まってホカホカになる加熱式駅弁の存在を知ったのもこの時刻表の欄外でした。新神戸駅のステーキ弁当だったと思うのですが、駅弁たるもの旅先で買うべし的なイメージを持っていたため、新神戸は近所過ぎて絶対買えない……、ってすごく残念な気持ちになったのを覚えています。
↑ますのすしは、見かけるとつい買ってしまう。どうしてなんだろう。
ある程度大人になった今思うのですが、若い頃って自分に対する縛りが厳しかったような気がします。こういう「駅弁は旅先で買うべし的」な、人生にとって無くてもよい縛り。
今なら「食べたければどこのだって買えばいい、なんなら近場でも目的地にしてしまえばいいのだ」っていう理屈をつけて買いに行くなり、物産展行くなりしますが、機会損失いっぱいしていたな。もったいなかった。
もちろん何らかの美学があるようなものもあった気がするのですが、今考えるとただの思いこみも多かったなと思います。でもそれが若さだったのかな。
さて、大月を11時32分に出発し、小淵沢に13時11分に到着します。
このまま中央本線を乗り継いで松本まで行ってもいいのですが、せっかくなので回り道をしましょう。13時29分発の小海線下りに乗って小諸方面へ。
ここで悩みます。小諸まで行くか、佐久平で降りるか。
佐久平ー上田間だけ新幹線に乗るなんてプランが見つかったのです。
というのも、グランクラスに乗ってみたくて前から気になっていたのです。
時刻表には新幹線を始めとする有料列車の編成(何号車がグリーン車か、とか)や、席番の案内なんかもあって、特に子供の頃は乗ったことのない寝台列車を想像していつか乗ってみたいを心をときめかせたりしていました。
でも今回のルールで新幹線はパス。15時51分、小諸に到着し、しなの鉄道に乗って篠ノ井を目指します。これが現実であれば小海線で確実に腰痛が始まっています。リアルの私であれば、一本遅らせてぶらぶらするなどします。
が、こちら無敵の二十歳。こたつでは腰痛なんか起こりません!
15時55分に小諸を出発し、16時48分に篠ノ井に到着します。
篠ノ井から松本までは篠ノ井線。この篠ノ井線は本数が少なそうなので、乗れるものに乗りましょう。17時26分発で松本到着は18時33分です。
OWLサポーター、OWL magazineを購読してくれている方の中には、松本に詳しい人がたくさんいるので松本街情報はばっちり(なはず)!
でもね、今日は上高地線に乗りたかったの!
ということで、松本駅で乗り換えて、18時40分のアルピコ鉄道上高地線に乗って終点の新島々まで。19時11分の到着です。
上高地の入り口の一つである新島々駅。
円子さんのこの記事をリツイートしたときにしたコメントがこんな感じなんですが
「最果てはエロス」派の私として、ちょろり路線の端っこの駅、何はなくとも堪能したい。(最果て=エロス論に関してはまた別の所で!それなりの分量になってしまうので。)
でも、流石に上高地の入り口。何もないわけがなく、温泉がありました!
竜島温泉せせらぎの湯
ただし山登りの拠点なので、夜遅くまであれこれ空いているわけでありません。温泉に入ったら松本の夜を堪能しに戻ります。ちょろり路線の果ての駅から乗る最終電車とか最高にドキドキするシチュエーションじゃないかと思うのですが、そこは泣く泣く諦めて、終電の2本前の20時10分発の電車で松本に戻ります。
宿は6月の松本旅で泊まった素敵なホテルに。
松本では、お店やホテルなどで優しく親切にしてもらうことが多くって、なんて豊かな土地なんだとびっくりしていました。これまで出張であちこちいきましたが、表現型(一見さんに対してあたりが柔らかく、とても優しい)は岡山に似ているのです。でもどうしてそういう表現系になるのかに関してはおそらく全然違うんだろうなという印象を受けました。そのあたりはまた松本旅のエッセイを書くときに掘り下げられればなあと思います。
そして松本の夜は更けていく・・・
______________________
こたつに寝転んでの片道旅行。
いまだったらジョルダンとかyahooの乗換情報で、すぐに調べられちゃう。
今回の旅行なんて、スマホのたった3画面で終わってしまうのです。
でも時刻表を眺めると、それだけではない情報がたくさん見つかります。
時刻表のこの路線図を眺めるだけでも、あれこれ妄想や思い出が広がります。
時刻表には電車の路線だけではなく、そこに接続するバス便や空の情報なんかも出ています。
旅が好きな人って私のイメージでは、直線的な移動ではなくそこに含まれるアクシデンタルな物事までもまるっと好きで堪能できる人が多いんじゃないかなと思っています。
だから欄外まで充実した時刻表って、ぴったりなのではないでしょうか。
今日は寒くってどこにも行きたくないや。でもちょっと冒険したい。
そんなときには、時刻表を眺めながらのこたつ旅行は最高です。
こたつにひきこもってハーゲンダッツでも食べながら時刻表をめくってみてください。
そこには新しい発見があるかもしれませんし、実際それをもとに旅行してみたら楽しさは倍増するのではないかと思います。
ここからは有料部分になりますが、このこたつ旅行で立ち寄れそうな、行ってみたいスタジアムやスポーツ競技場についての話です。
この記事は、旅とサッカーを彩るweb雑誌OWL magazineのコンテンツです。この記事について本文部分は無料で読めますが、有料のおまけ部分が文末にあります。単体で購読することも出来ますが、月額700円で15〜20記事が読み放題となるのでそちらの方がお得になっています。
ここから先は
OWL magazine 旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌
サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?